研究課題/領域番号 |
18K09724
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
三宅 実 香川大学, 医学部, 教授 (20239370)
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研究分担者 |
山口 一郎 国立保健医療科学院, その他部局等, 上席主任研究官 (50311395)
平田 拓 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (60250958)
大林 由美子 香川大学, 医学部, 客員研究員 (10284374)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 電子常磁性体共鳴 / 生体計測装置 / 歯エナメル質 / 放射線被曝評価 |
研究実績の概要 |
電子常磁性共鳴(EPR)歯牙線量測定法は、不対電子を測定することで電離放射線量を評価する確立された方法である。放射線緊急事態におけるトリアージのために、歯エナメル質を用いて放射線量を測定できるLバンドEPR装置で信号が検出できることを確認した。この装置の感度の限界から、事故で最も放射線を浴びた作業員(実効線量0.7Sv)でも信号を検出できないだろうと考えていた。しかし、福島の住民の測定で一部に信号が検出され、これは歯科医院でのX線によるものと推定された。今年度では、特に歯科放射線診療を受ける患者や職業被ばくに関して、EPR歯エナメル線量計で歯科放射線診療における放射線被ばくを検出できるかどうかを確認した。福島で測定された信号を検証し、歯科臨床で再現できるかどうかを検出し、患者と医療従事者(障害者歯科で)のそれぞれの放射線被ばくを推定し、EPR歯エナメル線量計の検出限界と比較した。生体内EPR歯牙線量測定では、Cs-137からのガンマ線の検出限界は2Gyであった。歯科用口腔内X線写真1枚あたりの自由空気カーマの中央値は3.6mGyと推定され、140枚で0.5Gyに達することになる。FOVが40~100cm2の歯科用コーンビームCTでは、1回の検査でビーム中心の空気カーマは29mGyとなり、17回の検査で検出限界レベルに達することができる。障害者歯科診療施設に勤務する3人の歯科医師の指のHp(0.07)を測定したところ、月間線量は0.2mSvから8.7mSvであった。これらの歯科医師が1ヶ月に行った処置の回数は7回から35回で、1回あたりの線量は1.2mSvから0.006mSvの範囲であった。処置あたりの線量の変動は、測定に使用した素子の位置を固定することが容易でないため、その位置に依存していた。これを加えると、照射野からの距離が線量に大きく関係することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人からの直接の測定に関しては新型コロナの影響があり実施できていない。しかし歯の被ばくに関連する歯科診療でのEPR信号の検出についての研究が実施できた。昨年度まで海外での学会参加は制限があったが今年度新型コロナが世界的に収束し、国際学会が開かれるようになった。今までの研究成果を、本年度2月にRadiation Protection and Environment学会(インド・ムンバイ)にて発表を行った。3年で終了する計画であったが今年度は概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
人の口からの計測は可能であれば実施する。歯エナメル質でのEPR放射線被ばく線量測定に関して、歯科医療が、その既存信号を発生する放射線被ばくの要因になっていることを調査する計画である。障害者歯科にかかる医療での被ばく線量(エナメル質内にラジカルとして発生するEPR信号)がL-bandの検出限界(0.5Gy)に累積すると達する可能性についての研究成果をEPR 2023: International Conference on EPR spectroscopy and Imaging of Biological Systems(フランス・パリ)にて2023年5月23日に発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染による行動制限もあり研究成果の国際学会での発表が延期になっていた。しかし世界的に新型コロナウイルス感染が収束し、EPR関連国際学会が開催されることとなった。2023年2月インドムンバイ、2023年5月にフランスパリにて研究発表を行う計画である。
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