研究課題
昨年度までの解析結果より高転移能を有するOSCC細胞株にBRD4の阻害薬であるJQ1を作用させるとOSCC細胞株の増殖抑制、および遊走能、浸潤能を抑制させることが分かった。そこで今年度はJQ1がマウスモデルでも腫瘍の増殖及び転移の抑制効果を示すかを明らかにするために同所性異種移植モデルにて検証を行った。高転移能を有するヒトOSCC細胞株をマウスの舌に移植し、JQ1を腹腔内に浸透圧ポンプを用いて、2週間持続的に投与を行った。その結果、移植部の舌の腫瘍はJQ1投与群にて腫瘍増殖が抑制される傾向にあった。さらに興味深いことに、舌の腫瘍から頸部のリンパ節への転移数に関しては、JQ1投与群で減少が見られた。これらの結果によりin vivoにおいてもJQ1がOSCC細胞の増殖と転移を抑制する効果を持つことが示唆された。次に、OSCC組織においてBRD4の発現状態と病態への関連性を明らかにするために生検組織でのBRD4の発現状態をqRT-PCRにて解析した。その結果、正常組織と比較し、OSCC組織ではBRD4の発現が有意に上昇していることが分かった。転移に関するMMP2遺伝子の発現に関してもOSCC組織にて有意に上昇していることが分かった。さらに転移に関してのBRD4の役割を明らかにするために頸部のリンパ節転移の有無とBRD4の発現状態の関連性に関して解析を行った。頸部へのリンパ節転移を初期診断時に認めた患者及び後発頸部リンパ節転移を認めた患者においては原発部の生検組織においてBRD4とMMP遺伝子とも発現が、転移なしの患者と比較し、高い傾向にあった。これらの結果により生体組織においてもBRD4とMMP2の高発現はOSCCの転移に関連している可能性が示唆された。今回の研究結果によりBRD4はMMP2の遺伝子をエピジェネテックに制御し、OSCCの転移に寄与していることが明らかとなった。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (2件)
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