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2018 年度 実施状況報告書

抗癌剤耐性高分化型口腔癌に対するEphA4を標的とした分子生学的メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K09729
研究機関琉球大学

研究代表者

仲宗根 敏幸  琉球大学, 医学部附属病院, 講師 (40381214)

研究分担者 金城 貴夫  琉球大学, 医学部, 教授 (30284962)
喜名 振一郎  群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (40422422)
喜名 美香  琉球大学, 医学部附属病院, 医員 (80578914)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード口腔癌 / EphA4
研究実績の概要

受容体型チロシンキナーゼEphA4 は子宮頸がん細胞株において、高分化型腫瘍において高発現していることがウェスタンブロットにて確認できたため、口腔癌組織における発現を分化度依存的に確認している。今のところ、高分化型において高発現する傾向は観察されているものの、有意差は出ないため、引き続き口腔癌組織中からRNA を抽出し、EphA4 の発現をreal time PCR で確認中である。また、TCGA (The Cancer Gene Atlas) を用いて、EphA4 の発現を頭頸部癌で観察したところ、高分化型において高発現していることが判明した。一方、当科では、術前に低用量頻回投与のレジュメに基づく化学療法を施行してきた。化学療法後の腫瘍切除物から、腫瘍細胞の有無を組織学的に検討し、舌癌患者の無病生存率を外科療法単独と比較したところ、腫瘍の残存が無い患者に施行したレジュメでは、外科単独療法と比較して無病生存率の有意な改善が観察された。このことは、現在行っているEphA4 をターゲットとした高分化型腫瘍の抗癌剤耐性機構を打破する治療戦略が将来的に舌癌患者の無病生存率の改善を達成することを期待させる結果となっている。この結果を、論文に投稿し受理された(Kina S, Nakasone T, 2018 Oct 13. Clin Oral Investig.)。現在は抗癌剤暴露依存的なEphA4 の活性化後、下流ではどのようなシグナルが誘導されているのか、real time PCR を用いて転写産物の増減を確認している段階である。興味深い下流分子として、c-fos やc-jun の発現が抑制されている現象を観察している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

EphA4 の抗癌剤耐性を誘導するメカニズムに、頭頸部癌と子宮頸がんで共通性が見出されたこともあり、昨年、それらをまとめて、投稿し、受理されている(2018 Sep 27. Eur J Pharmacol.)。また、現在は、頭頸部腫瘍組織全体での分化度依存的な受容体型チロシンキナーゼの発現をTCGA を用いて解析したところ、EphA4 のみならず、EphB3 およびEphA1 がやはり高分化型腫瘍特異的に発現が高くなっていることも見出している。Eph ファミリーが高分化型頭頸部腫瘍特異的に発現が高くなっているという結果は、当初予想していなかった結果であり、高分化型頭頸部腫瘍の発生を考えるうえで大変興味深い結果を得ている。現在はこの結果をさらに深化させていく過程である。抗癌剤暴露後にEphA4 の下流では、様々な転写産物の発現が抑制されていることも確認しており、この現象が高分化型腫瘍の有する抗がん剤耐性にどのような影響を与えるのかという点に注目している。当初の研究計画で生化学実験と、マウス実験を担当する研究分担者が、他機関へ異動しており、この研究分担者との共同研究ネットワークの再構築が、現在の大きな課題である。また、臨床研究においても、高分化型口腔癌と低中分化型口腔癌にわけて、術前化学療法の効果を検討したところ、低中文化型腫瘍においてのみ、生存率の改善が観察されている。これらの臨床データを含めて論文を書き上げ、近日中に投稿する予定である。以上をふまえて、研究はおおむね順調に進展している。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策としては、高分化型頭頸部腫瘍特異的に高発現しているEph ファミリーがすべて、抗癌剤暴露依存的に活性化されるのか、また活性化された後にどのようなシグナル経路が誘導されて、どのような転写産物が下流で生成されているのかということをつきつめていく予定である。また、術前に低用量頻回投与の化学療法(メトロノーム化学療法)を施行した口腔癌患者の生存率を、外科単独と比較した場合、低中分化型口腔癌では生存率が改善していたが、高分化型口腔癌では改善傾向が観察されていない。この興味深い臨床データを確固としたものにするため、予後確認をしっかりと進めていく。現在得られているEphA4 の高分化型腫瘍高発現のデータは、あくまでも頭頸部領域全体の結果であり、口腔癌領域にしぼってどうなのかという点についても生検サンプルでの発現を調べていく予定である。並行して、EphA4 の免疫染色可能な抗体を探索し、免疫染色によっても、高分化型特異的な発現が観察できるか検討する。細胞実験においては、これまでのデータは全て子宮頸がん細胞株を用いたものであるため、口腔癌細胞株においてもEphA4 が発現し、抗がん剤耐性を有しているか、生化学実験により、再確認していく。生化学担当の研究分担者が他機関に異動となり、ゲノム医療に関連した研究を開始している。生化学実験にゲノム医科学を取り入れた研究も行う予定である。今年度から、マウス実験担当の研究分担者が他機関へと異動となり、異動先でもマウス実験が可能か、現在検討中である。

次年度使用額が生じた理由

昨年度、生化学担当の研究分担者が異動となり、当初予定していた生化学実験の進捗が遅々としたため、研究経費の計画当初どおりの使用が困難となった。現在、異動先において本研究課題の生化学実験を立ち上げている段階であり、今回生じている次年度使用額を使用して、研究を継続していく予定である。そのため、異動先における実験系の立ち上げに有する費用として、試薬や実験器具の購入を検討中である。具体的には、ゲノム医療を見据えた研究を行う。高、中、低分化型口腔癌由来の細胞株を入手し、子宮頸がんのみならず、口腔癌細胞株においても、eph family が抗癌剤耐性に関与しているか突き止めていく予定である。さらに、研究分担者が異動した機関において、口腔癌を扱っている研究機関が存在し、その機関とも連携することで、共同研究の枠組みをより大きく発展させることができないか模索中である。可能であれば、高分化型、中分化型、低分化型口腔腫瘍において、どのようなシグナルが活性化されているか、ヒト口腔腫瘍組織を用いて、マイクロアレイやRNA-seq を使用した解析を行いたい。その経路に対してEph family の関与を検討することで、研究のさらなる深化をはかりたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Oral health behavior of children and guardians’ beliefs about children’s dental caries in Vientiane, Lao People’s Democratic Republic (Lao PDR)2019

    • 著者名/発表者名
      Phanthavong Somphone、Nonaka Daisuke、Phonaphone Thongsavanh、Kanda Kyoko、Sombouaphan Phouphachanh、Wake Norie、Sayavong Sangvane、Nakasone Toshiyuki、Phongsavath Khampe、Arasaki Akira
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 14 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0211257

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Outcomes after up-front surgery and metronomic neoadjuvant chemotherapy with S-1 or UFT for early tongue squamous cell carcinoma2018

    • 著者名/発表者名
      Kina Shinichiro、Nakasone Toshiyuki、Kinjo Takao、Nimura Fumikazu、Sunagawa Nao、Arasaki Akira
    • 雑誌名

      Clinical Oral Investigations

      巻: - ページ: 1-6

    • DOI

      10.1007/s00784-018-2689-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Targeting EphA4 abrogates intrinsic resistance to chemotherapy in well-differentiated cervical cancer cell line2018

    • 著者名/発表者名
      Kina Shinichiro、Kinjo Takao、Liang Feixin、Nakasone Toshiyuki、Yamamoto Hideyuki、Arasaki Akira
    • 雑誌名

      European Journal of Pharmacology

      巻: 840 ページ: 70~78

    • DOI

      10.1016/j.ejphar.2018.09.031

    • 査読あり

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公開日: 2019-12-27  

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