研究課題
本研究グループは小児期における放射線治療が歯の発生過程に障害を与えることに着目し、放射線が歯根形成に与える影響、メカニズムを明らかにすることを目的としている。そのために、歯根形成開始時期にあたる生後5日齢のマウス下顎第1臼歯に限局した局所照射を行い、被曝した歯胚のみが歯根形成障害(歯根の短縮化、未形成)を生じる実験モデルを確立している。これまでに本実験モデルを使用して、被曝した歯胚歯根の3次元的構造変化や根尖部の組織学的変化を英文雑誌の原著論文として報告している。放射線被曝により歯根形成障害が引き起こされる主な原因の1つとして、本研究グループは根尖部に位置するヘルトヴィッヒ上皮鞘の上皮間葉転換(EMT: Epithelial Mesenchymal Transition)が関与するのではないかと考え、本実験モデルを利用してヘルトヴィッヒ上皮鞘のEMT化について明らかにすることを検討している。本年度は、放射照射後の歯胚のヘルトヴィッヒ上皮鞘のEMT化を免疫組織化学的手法により経時的変化を観察できるようサンプルの採取、組織の染色実験を行った。今後は、さらにヘルトヴィッヒ上皮鞘の変化を解析することにより、歯根形成障害が生じる原因を明らかにしたい。