研究課題/領域番号 |
18K09740
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
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研究分担者 |
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
田沼 順一 新潟大学, 医歯学系, 教授 (20305139)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 唾液腺多形腺腫 / 低酸素 / HIF-1α / SM-AP |
研究実績の概要 |
1) SM-AP細胞系のHIF-1α遺伝子発現抑制による細胞機能解析:HIF-1αがSM-AP細胞系の機能にどのように関わっているのかを検討するために、siRNAを用いたHIF-1α発現を抑制したSM-AP細胞系を作成し、細胞増殖能および遊走能の比較検討をおこなった。その結果、siRNAでSM-AP1/4細胞系のHIF-1αの発現を抑制したうえで、細胞を同量にまきなおした後の3日間の細胞増殖を比較したところ、SM-AP1及びSM-AP4ともに、HIF-1αの発現を抑制した細胞の増殖が、コントロールに比して抑制されてることが示された。さらに同様にトランスウエルチャンバーに細胞をまきなおした後、12時間及び24時間後の細胞遊走を比較したところ、SM-AP1でHIF-1αの発現を抑制した細胞の遊走能が抑制された。 2) 細胞増殖関連液性因子の網羅的解析:腫瘍間質に存在する細胞増殖関連液性因子を抽出するために、SM-AP1/4細胞を低酸素培養条件下と通常培養条件下で培養したのち、培養上清を回収し、Proteome ProfilerTM 抗体アレイキット(R&D systems)を用いて細胞増殖関連液性因子の網羅的解析をおこなった。その結果、SM-AP1/4ともに、低酸素培養条件下でEmmprinやAngiogeninの発現が増加するとともに、逆にGDF-15やPentraxin3など発現の減少がみられた因子などが明らかとなった。 3) CD73の発現動態及び腫瘍細胞の機能評価: 組織内酸素濃度測定にて低酸素状態であると確認し得たSM-AP細胞移植腫瘤でCD73の発現がみられることはすでに確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにSM-AP細胞系を用いたHIF-1α遺伝子発現抑制による細胞機能解析で、細胞の増殖と遊走が抑制されたことから、低酸素下でのSM-AP細胞系の増殖や維持にHIF-1αの活性化が関係していることが示唆された。また腫瘍間質に存在する細胞増殖関連液性因子を抽出するためにおこなった細胞増殖関連液性因子の網羅的解析で、低酸素培養条件下で発現の増加または減少を示す因子が複数みつかったことから、HIF-1αの活性化に依存した細胞の増殖や維持に重要な低酸素応答性増殖機構の分子機構の解明に繋げられると想定された。
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今後の研究の推進方策 |
SM-AP細胞系は低酸素環境で細胞外基質(ECM)合成能を亢進していることがわかっているので、HIF-1αの発現動態による影響を検討するために、siRNA法によりHIF-1αの発現を抑制することで、ECM合成に影響があるかを検討する。また抽出し得た低酸素応答性増殖機構に関係する細胞増殖関連液性因子をヒト腫瘍組織材料を用いた組織学的解析でも検討する。また本年度は予定していたCD73の発現動態及び腫瘍細胞の機能評価についての検討も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は予定していたCD73の発現動態及び腫瘍細胞の機能評価についての検討が進められなかったため、次年度にそのために必要な試薬等の購入費用を繰り越した。
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