研究課題/領域番号 |
18K09744
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
虎谷 茂昭 広島大学, 医系科学研究科(歯), 准教授 (90172220)
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研究分担者 |
岡本 哲治 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (00169153)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / 口腔扁平上皮癌 / side poulation / CD133 |
研究実績の概要 |
近年, 癌を形成する細胞集団の中に, 多くの癌細胞とは異なる性質を有する少数の特徴的な癌細胞である癌幹細胞が存在することが明らかになってきた。癌幹細胞の概念は, 組織においても正常組織と同様に組織構築に幹細胞を基盤とした階級構造をとり、多様性を有していることである。癌幹細胞は自己複製能を有し, 少数の細胞からでも高率に腫瘍を形成する造腫瘍能を有している。癌幹細胞の存在比率は数%以下と考えられ,腫瘍を形成する大部分の細胞は癌幹細胞から生み出された増殖能力を有する癌前駆細胞と分裂能力を失った癌細胞であると考えられている。癌幹細胞は,正常組織幹細胞と同様に特別な微小環境(ニッチ)内に存在し, 通常は休眠状態にある。癌幹細胞は,増殖する細胞を標的とする従来の癌治療(抗癌剤や放射線療法)に抵抗性を示すとともに,癌の再発にも深く関与していると考えられ,癌治療における新たな標的細胞として注目されている。しかし,生体内の多くの組織中には正常な組織幹細胞が存在している上に,悪性腫瘍の中にも骨髄由来幹細胞が動員されることが知られている。そのため癌組織から癌幹細胞と正常幹細胞とを区分して分離精製する事は極めて困難である。正常幹細胞のコンタミネーションがほとんどないと考えられる口腔扁平上皮癌(OSCC)由来細胞株を用いることでOSCC癌幹細胞モデルが構築できる可能性を検討する。 本研究では,癌幹細胞の特性の一つである高い薬剤排出能を利用し,OSCC癌細胞から分離した Side population (SP) 細胞群の細胞・分子生物学的特徴の解析を, 含有成分の明らかな無血清培養系を用いて行うことで,SP細胞が癌幹細胞候補足り得るかを検討する。最終的には,SP細胞を標的とした口腔扁平上皮癌の分子標的診断・治療の開発を目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.抗癌剤の影響を細胞増殖能およびsphere形成能で検討した。ところSP細胞は抗癌剤委体制を示した。また抗癌剤のSP細胞に及ぼす影響をFACS解析したところ培養OSCC中のSP細胞比率が増加することが明らかになった。 2.ヌードマウス皮下移植モデルを用いたSP細胞およびMP細胞の造腫瘍能を検討した。SP細胞の高い造腫瘍性が明らかになった。腫瘍組織中に占めるSP細胞の比率を検討した。 3.OSCC細胞株,SP細胞およびMP細胞を用い, 通常培養(20% O2下)と低酸素下(1%O2下)培養後, FACS解析を行い, SP細胞群の比率を検討する。低酸素下で培養する過程を繰り返すことの影響を検討する。 4.siRNAによるCD133遺伝子の発現抑制,ならびにHIF-1α DNA遺伝子導入を行い全細胞におけるSP細胞に及ぼす影響を検討した。その結果 HIF-1遺伝子導入細胞株のHIF-1α遺伝子のみならず VEGFA, ABCG2, ABCB1の遺伝子発現量が増加していたことが明らかになった。 以上のように、昨年計画した実験は順調に結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
1) DNAマイクロアレイによるSP細胞およびMP細胞間の遺伝子発現解析により比較を行う。SP細胞,MP細胞から抽出・精製したDNAを用いてマイクロアレイを解析後, ヒートマップ上にてクラスター解析を行う。 2)さらにpathway解析を行い, regulatory networkを解析する。Pathway centerを担っていたサイトカインの口腔扁平上皮癌細胞株に及ぼす影響について検討する。すなわちMP細胞と比較し, SP細胞において数倍高発現している遺伝子に対してpathway解析を行い,regulatory networkの検討を行う。さらに Pathway centerを担っていた因子の口腔扁平上皮癌細胞株に及ぼす影響を単層培養系での細胞増殖や浮遊培養系を用いたsphere形成能に及ぼす影響について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
「理由」培養細胞のの遺伝子発現解析を行う予定であるが必要な薬剤の検討を行っている段階である。詳細が決まれば購入する予定である。
「研究計画」DNAマイクロアレイによるSP細胞およびMP細胞間の遺伝子発現解析により比較を行う予定である。SP細胞,MP細胞から抽出・精製したDNAを用いてマイクロアレイを解析後, ヒートマップ上にてクラスター解析を行う。
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