研究課題
R2年度ではこれまで用いてきたプラバスタチンとロスバスタチンの培養細胞系の実験での結果が予想外であったことを考慮し、過去の報告から有効性の高いシンバスタチンを選択し、マウス骨芽細胞(MC3T3-E1)の増殖能と骨細胞への分化能に対する影響を評価した。シンバスタチンを0~10uMの濃度で培養し、MTTアッセイを行ったところ、培養開始48時間後に5uM、10uMの群で細胞数の低下がみられた。さらにアルカリフォスファターゼ染色を行ったが、シンバスタチンの濃度依存的に骨分化誘導の低下が認められた。この予想と相反する結果はこれまで用いてきたプラバスタチンやロスバスタチンよりも顕著であり、スタチンによる骨形成促進作用が本研究では示されなかった。さらに海外のin vivoの先行研究では、ラットの骨量増加をもたらすスタチンの投与量は現在高脂血症改善に用いられている量の数倍であり、ヒトへの応用の際には有害事象が発生する危険性がある。さらに高脂血症患者の中でも顎骨壊死を発症する症例があるため、スタチンの本来の生理的な用量では予防効果に乏しく、治療効果も得られにくいと考えられる。このため顎骨壊死治療用材料の開発のためには全く異なるアプローチが必要であると考えた。また、ゾレドロン酸による顎骨壊死モデルラットを作製に関しては、Wister系ラットにZoledronate 100ug/kg/週を皮下投与し、投与後1週間で臼歯の周囲歯肉を4-0絹糸で結紮し、4週後に臼歯を抜歯して、抜歯4週後に骨露出が継続するものをBRONJ発症ラットとする方法を採用し、実験を継続してきたが、COVID-19の蔓延により動物実験施設利用の制限があったため、十分な検証実験を行うことができなかった。このラットのBRONJモデルの確立は次の研究課題でも継続して検証していく予定である。
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Biochemical Genetics
巻: 58 ページ: 473~489
10.1007/s10528-020-09961-2