研究課題/領域番号 |
18K09748
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
住田 知樹 九州大学, 歯学研究院, 共同研究員 (50314951)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腺様嚢胞癌 / 浸潤、転移 / ID2分化抑制因子 |
研究実績の概要 |
唾液腺悪性腫瘍の一つである腺様嚢胞癌は、強い局所浸潤能と肺をはじめとした遠隔転移能を有するが、反面、発育が緩慢なものも多い。よって、担癌状態で比較的長期に生存する患者も少なくないが、やはり現在の所、その治療は外科的切除に頼るしかなく、他にエビデンスが確立された治療法は無い。本研究では研究代表者が一貫して追求してきた分子であるID2をターゲットにし、新しい唾液腺癌治療の開発を行っている。 初年度はID2 antisense vectorを唾液腺腫瘍細胞に導入することによって著明な増殖、および浸潤抑制効果が得られることをin vitroにて確認できた。具体的にはヒト腺様嚢胞癌由来細胞株であるACC2、ACCMを用いID2 antisense vectorを作成、リポフェクション法により遺伝子導入を行い、多数のサブクローンを樹立した。ウエスタンブロッティングにてトランスフェクションの効率はクローンによりかなり差があることが確認された。 第2年度はID2 antisense vector導入唾液腺腫瘍細胞を使用して得られる増殖、および浸潤抑制効果の詳細なメカニズムをin vitroにて解析した。具体的には浸潤能の獲得に際してマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の役割を調べた。MMPはいくつかのサブタイプが存在するが、ID2 antisense vector導入唾液腺腫瘍細胞では中でもMMP2の発現が有意に抑制されることが確かめられた。またE-cadherinの発現は有意に亢進し、細胞間接着の再獲得が示唆された。 今後はさらなる分子解析により、増殖浸潤能の抑制に関わるカスケードの解明に注力したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度はID2の抑制にて変化した腫瘍細胞の悪性形質に関わる分子メカニズムを解析することが目標であり、MMPやE-cadherinなどその一旦が解析できたことは意義が大きい。今後、同様の実験系を用いてさらなる関連分子解析が行えるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続き、in vitro中心の実験による細胞特性の変化の確認が続くが、3年目に当たり、より研究が進むようであれば本実験系のin vivoへの応用も確認したい。そのためにヌードマウスへの移植に最適な唾液腺細胞株の選定を早めに済ませておく必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験系の変更により購入を予定していた試薬購入経費の削減を図ることができ、その相当分の予算に使用額の変更が生じた。
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