研究課題
骨移植術の目的は、上顎骨の顎裂部骨欠損部を修復して上顎歯槽形態を改善するのみならず顎裂内に隣在歯の萌出、移動などによって審美的・機能的な咬合関係をもたらすことである。現在、骨移植術で用いられる移植骨は自家骨が多いが、本研究では自家骨の代わりに骨成長因子ならびに骨再生材料を用いて骨移植術を行い、適切な骨架橋の形成や術後の矯正治療などが可能か否かを検証することである。これまでに、琉球大学病院歯科口腔外科ならびに沖縄赤十字病院歯科口腔外科で行った骨移植患者の骨架橋幅などの評価を適切に行うために、CBCTによる三次元的評価法を考案し、口蓋裂学会等で発表した。昨年度は、自家骨による骨移植患者症例数を追加するとともに、それらの三次元的評価を行い、その評価法の有用性ならびに骨移植術後の治療成績を国際学会で発表予定であったが、コロナウイルス発生により中止となった。また、研究分担者である岐部は新規骨再生誘導材OCP/Collagen(リン酸オクタカルシウム・コラーゲン複合体)の多施設共同単一群試験(UMIN ID:000018192)において、片側性唇顎裂および唇顎口蓋裂患者に対する顎裂部OCP/Collagen移植術を実施し、OCP/Collagen 移植を行った症例は術後6か月で移植部に永久歯の萌出が認められ、Bergland評価ではGrade1であったと報告しており、今後、症例数を増加して治療成績を報告する予定である。また、CBCTによる三次元評価では、OCP/Collagen 移植を行った症例は厚みのある骨架橋形成が認められたが、1例のみ鼻腔例側の高さがやや不十分であった。OCP/Collagen移植は、骨架橋や永久歯の萌出において骨移植とほぼ同様な結果を示したことから、自家骨と同様な機能を果たす材料として十分に期待できると考えられ、本年度は、これらの結果をまとめて報告する。
3: やや遅れている
今年度は、昨年度から引き続き唇顎裂患者に自家腸骨海綿骨移植術を施行し、術後経過をパノラマX線写真、CBCTによる三次元的評価を行い、さらにその結果を評価して最終報告を行う予定である。しかし、これまでの研究成果の中間発表をアメリカ口蓋裂学会で報告する予定であったが、コロナウイルスのパンデミックにより学会は中止となり発表は延期となった。また、コロナ窩の影響で昨年度は手術症例数が制限され、先の理由で国際学会の成果発表ならびに国際的な研究打ち合わせの機会が失われたため、若干の遅れが生じている。今後、その遅れを取り戻すとともに、手術症例を増やして、自家骨と骨補填剤の有用性を検討する予定である。
顎裂部の骨移植術に自家骨以外の骨材による骨再生医療の確立を目指した研究で、今後は人工骨を用いた骨移植術を積極的に行い、その術後結果の検証を進めて、人工骨材料の有用性を検討する予定である。また、研究の遅れを取り戻すために、本年度は積極的に臨床症例数を増やすとともに、研究最終年度のためこれまでの研究結果を再度整理し、コロナ窩が落ち着けば国際学会の発表を行い、最終報告書をまとめる予定である。
骨移植術に使用予定の骨再生材料の認可は下りたものの、販売価格の調整がつかずに購入が出きなかった。また、昨年度にアメリカの国際学会ならびに日本口蓋裂学会、口腔外科学会等で出張により研究結果の報告および共同研究者と研究打ち合わせを行う予定であったが、コロナウイルスにより学会がオンデマンドとなり旅費等を使用しなかった。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)
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