研究実績の概要 |
口腔癌に対する動注併用放射線治療は近年の良好な成績から再び注目されてきている.その方法には2つの経路があり,浅側頭動脈から逆行性にカテーテルを挿入する方法と大腿動脈からSeldinger法でカテーテルを挿入する方法である.申請者,ならびに研究分担者らは,脳血管障害のリスクを低減できる逆行性動注化学療法を25年にわたって1,000例以上施行してきており,標準治療とされている手術療法と比較しても遜色ない治療成績を報告してきた.さらに治療の精度,汎用性を高めるべく申請者らは浅側頭動脈から挿入可能なシース(ECAS)を世界で初めて開発し,またECASの動脈に挿入するマイクロカテーテルも開発した.この治療により,複数の動脈から栄養される進行口腔癌の治療は大きな進展を得られてきている.本研究では,MRIによるフローチェック時の画像解析精度向上,腫瘍栄養動脈の3次元CT解析を行い,既存の治療を評価するとともに,将来的なカテーテル改良につながる知見を得ることを目標とした.栄養動脈の解析についてはCT 画像解析ソフト(mimics)を用いてデータの収集を行い.いくつかのパターンと血管分岐の角度などについて分析を進めたが,今後臨床に生きるような治験は現段階では得られていない.MRIフローチェックの際の画像評価では造影剤投与前に高速スピンエコー法(FSE法)およびグラジエントエコー法(GRE法)による撮像を行い,造影剤の組織内濃度について一定の知見が得られており,論文が欧米雑誌に掲載された.MRIを用いた造影剤の組織内濃度と投与量,投与経路について今後の指標となりえる結果を得ることができた.得られた知見を参考にしながら,継続して超選択的動注化学療法を行い,症例をためて精度向上が可能か否かについて前向きな検討を進めている.
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