研究課題/領域番号 |
18K09758
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
田口 明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70243582)
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研究分担者 |
杉野 紀幸 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (10460445)
吉成 伸夫 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (20231699)
東 幸仁 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (40346490)
浅野 晃 関西大学, 総合情報学部, 教授 (60243987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨粗鬆症 / 骨質劣化 / 骨折 / パノラマエックス線写真 / 皮質骨形態 |
研究実績の概要 |
平成30年度は、パノラマエックス線写真上の下顎骨皮質骨形態指標3型(高度骨粗鬆化)を有する糖尿病患者は大腿骨骨折のリスクが高いという仮説を検証した。本大学病院を受診しパノラマエックス線写真を撮影した患者のうち、カルテにて既往歴が十分把握できた40歳以上の女性患者650名(平均62.5歳)について検証を行った。調査項目は、大腿骨骨折既往、糖尿病歴、年齢、現在歯数、高血圧歴、高脂血症歴、リウマチ歴、現在喫煙歴、服用薬剤数および骨粗鬆症治療薬歴として、パノラマエックス線写真上の皮質骨形態指標3分類は1名の歯科放射線専門医が評価した。具体的には、皮質骨形態1,2型をreferenceにして、3型で糖尿病なし、および3型で糖尿病ありの群が大腿骨骨折を有するリスクを評価した。評価は、寄与因子を補正して変数増加法 による多変量解析にて大腿骨骨折を有するodds ratioを算出した。またROC解析により大腿骨骨折を予測する能力を、上記3分類および糖尿病の有無のみについて評価した。結果、Reference群に比して、大腿骨骨折を有する修正オッズ比は、3型で糖尿病なし群で1.48(95%信頼区間、0.26-8.63)、3型で糖尿病あり群で18.9(2.17-164.8)であった。ROC解析において糖尿病既往単独で大腿骨骨折を予測するAUROC(ROC曲線下面積)は0.601、皮質骨形態分類と糖尿病既往を組み合わせた場合のAUROCは0.734であった。以上より、3型で糖尿病ありの患者は大腿骨骨折リスクが極めて高い可能性が示唆された。糖尿病患者の1型コラーゲンの架橋構造は終末糖化産物により虚弱となっているため、骨質劣化により骨折リスクは高くなると報告されているが、今回の結果では、マクロな皮質骨構造の虚弱化に骨質劣化が加わった場合、大腿骨骨折リスクは多大になることが示された、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度の目標は、マクロな皮質骨虚弱化(骨粗鬆化)に骨質劣化が加わった場合、骨折リスクはどうなるかを検証することが目的であったため、概ね順調に進展していると判断した。ただ今回は糖尿病という終末糖化産物が1型コラーゲンに蓄積する病態を対象に行ったが、腎機能低下の対象者も踏まえた検証も必要と思われた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の対象は650例であったが、これを平成31年度以降は4000名のレベルまで上げて検証を行う。これには本年度行えなかった腎臓機能低下による骨質劣化を有する対象者も加えて行う。この研究のためにすでに松本歯科大学倫理委員会へ答申を行った。 一方で共同研究者のグループでは、歯周病指標が血管内皮機能障害を起こして骨に影響を与えるメカニズムの検証を現在行っているところであり、この研究結果が出た際には、パノラマエックス線写真にこの指標を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の浅野と杉野は情報収集のために配分額を使用する予定であったが、情報収集のための学会へ行けなかったために、次年度に繰り越すこととなった。また研究責任者の田口は、パイロット研究は終了したが、それを確認するための検証研究の倫理委員会承認が遅くなったため(倫理委員会は2019年3月承認)、研究に要する機材を購入できなかった。平成31年度は田口、浅野および杉野共に計画通りの使用を行う。パイロット研究結果は研究責任者の田口が平成31年度の3つの学会(東京、神戸、福岡)で発表する予定である。浅野は画像処理の学会にて情報収集および一部発表のために旅費として用いる。また杉野は学会で情報収集を行うと同時に、研究成果の一部を学会にて発表する。研究分担者の東は研究の一部をすでに論文投稿(現在査読修正中)しているため、その投稿代として使用する。
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