研究課題/領域番号 |
18K09759
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永井 宏和 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50282190)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨置換型人工骨 / 徐放性 / ハイドロゲル |
研究実績の概要 |
令和2年度は,前年度に引き続き,リン酸カルシウム(Cp)系バイオマテリアルと成長因子との複合化およびCp系バイオマテリアルとコラーゲンとを複合化した骨置換型人工骨の創製を行った.Cp系バイオマテリアルとしては,炭酸アパタイトとハイドロキシアパタイトを用い,複合化および複合体の作製条件をそれぞれ検討した.また,作製した複合体の移植予備実験を行った. Cp系バイオマテリアルとBMP-2との複合体作製:Cp系バイオマテリアルにBMP-2溶液を滴下含浸させた後に凍結乾燥させてCp-BMP複合体を作製した.顆粒径は100-300,300-600,600-1000 マイクロメートルの3種類とし,BMP-2濃度は0, 0.5, 5, 50 マイクログラム/mlとして複合体を作製した.作製した複合体をラット背部皮下に移植した. Cp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合化:Cp系バイオマテリアルとコラーゲン(Col)溶液を混和した後,チューブに充填して凍結乾燥し,円柱状のCp-Col複合体を作製した.顆粒径は100-300,300-600,600-1000 マイクロメートルの3種類とし,Col濃度は1,2,3%として複合体を作製した.また,CpとColの重量比を50,65,80 wt%として複合体を作製した.さらに,作製したCp-Col複合体に熱架橋を施し,その影響について検討した. ハイドロゲルマイクロ粒子とCp系バイオマテリアルとの複合化:Cp系バイオマテリアルにハイドロゲルマイクロ粒子を滴下含浸させた後に凍結乾燥させて複合体を作製した.また,Cp-Col複合体にハイドロゲルマイクロ粒子を滴下含浸させた後に凍結乾燥させて,複合体を作製した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,ハイドロゲルマイクロ粒子とCp系バイオマテリアルとを複合化し,さらにこの複合体にFGFやBMP,SDF-1といった異なる成長因子を吸着させることで,多剤徐放性の骨置換型人工骨を創製する予定である. これまで,Cp系バイオマテリアルとしては炭酸アパタイトとハイドロキシアパタイトを用い,BMP-2との複合化の条件について検討した.複合体の移植実験はCOVID-19感染症の影響で計画通りには進んでいないが,Cp系バイオマテリアルとBMP-2との複合体のラット背部皮下への移植実験では,異所性骨形成には50 マイクログラム/mlのBMP-2が必要であった.今のところ,Cp系バイオマテリアルと複合化できている成長因子はBMP-2だけであり,その他のFGFやSDF-1といった成長因子との複合化はできていない. 一方,Cp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合化については,Cpの顆粒径,コラーゲンの濃度,Cpとコラーゲンの重量比等について検討し,Col濃度は3%,CpとColの重量比は65 wt%が適していた.ただ,この複合体は脆弱で操作性が悪かったため,コラーゲンの熱架橋による安定性について検討を行った.その結果,熱架橋により,複合体の操作性が改善した.Cp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合体の移植実験は準備中である. 多剤徐放を目的としたハイドロゲルマイクロ粒子とCp系バイオマテリアルとの複合化ができていない状況である.また,BMP以外の成長因子との複合化もできていないため,研究が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,ハイドロゲルマイクロ粒子と生体吸収性リン酸カルシウムセラミックスとを複合化し,さらにこの複合体にFGFやBMP,SDF-1といった異なる成長因子を吸着させることで,多剤徐放性の骨置換型人工骨を創製する予定である. Cp系バイオマテリアルとBMPとの複合化およびCp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合化は,おおむね順調に進んでいて,複合体の作製条件も整ったが,BMP-2以外のFGFやSDF-1といった成長因子との複合化ができていないので,その複合化について進める必要がある.さらに,多剤徐放を目的としたハイドロゲルマイクロ粒子と生体吸収性Cp系バイオマテリアルとの複合化ができていないので,複合体作製の条件を検討する必要がある. Cp系バイオマテリアルとBMP-2との複合体のラット背部皮下への移植実験では,異所性骨形成には50 マイクログラム/mlのBMP-2が必要であり,高濃度のBMP-2がひつようであった.異所性ではなく,骨欠損部への移植に用いる場合にはもっと濃度が低くても骨形成が促進される可能性があるので,どれくらいの濃度のBMP-2が必要かを移植実験で検討する必要がある. 一方,Cp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合体の移植実験はできていないので進めていく必要がある.さらに,多剤徐放を目的としたハイドロゲルマイクロ粒子と生体吸収性Cp系バイオマテリアルとの複合化ができれば,移植実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では,ハイドロゲルマイクロ粒子と生体吸収性リン酸カルシウムセラミックスとを複合化し,さらにこの複合体にFGFやBMP,SDF-1といった異なる成長因 子を吸着させることで,多剤徐放性の骨置換型人工骨を創製する予定である. Cp系バイオマテリアルとコラーゲンとの複合化,およびCp系バイオマテリアルとBMPとの複合化は,おおむね順調に進んでいる.ただ,今のところ,Cp系バイオ マテリアルと複合化できている成長因子はBMP-2だけであり,その他のFGFやSDF-1といった成長因子との複合化はできていない.また,多剤徐放を目的としたハ イドロゲルマイクロ粒子とCp系バイオマテリアルとの複合化ができていない.そのため,動物での移植実験が行えなかったため,令和2年度に繰り越されること になった. 令和2年度に繰り越された費用は,複合体の動物への埋植実験の組織学的な評価,ハイドロゲルマイクロ粒子との複合化に使用する予定である.
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