研究課題/領域番号 |
18K09763
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
林 孝文 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80198845)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 深達度 / DOI / 超音波診断 / 口腔内走査 / 音響カップリング材 / 標準化 |
研究実績の概要 |
令和2年度(2020年度)においては、新潟大学倫理審査委員会承認(承認番号2019-0167・研究期間:2019年9月18日~2021年3月31日)のもと、本学を主たる研究機関とする多施設共同研究(本学を含めて6施設;新潟大学、日本歯科大学新潟生命歯学部、東京医科歯科大学、福岡歯科大学、愛知学院大学、広島大学)を行った。腫瘍切除術が施行され病理組織学的DOIと比較検討しえた舌扁平上皮癌患者333名(男性205名・女性128名、最高98歳・最低22歳・平均61.3歳)を対象として、DOI診断精度の統計学的な再検討を行った。 その結果、口腔内超音波診断法による深達度(超音波DOI)と病理組織学的DOIの間に、相関係数 r=0.91と非常に高い相関が認められた。またBland-Altman Plotでは、bias=0.37 mm、95%信頼区間は-3.64 mmから4.44 mmの範囲であり、超音波DOIと病理組織学的DOIの平均が10 mm以下では比例誤差はほとんど認められなかった。平均して超音波DOIは病理組織学的DOIと比較して若干過大評価であるが、その固有誤差は1 mm未満であり、DOI が 10 mm以下の場合には口腔内超音波診断法により正確なDOIの測定が可能である可能性が示された。 一方、各施設における超音波DOIと病理組織学的DOIの誤差の比較では施設間に有意差が認められた。いずれの施設でもホッケースティック型探触子が使用されていたが、音響カップリング材等の使用状況は各施設で異なっており、これが有意差の原因となった可能性が示唆された。 本研究の成果は、第39回日本口腔腫瘍学会総会・学術大会(2021年1月28日~2月21日・web開催)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り多施設共同研究を遂行することができ、令和元年度(2019年度)までの単施設のみの研究と比較して、より高い信頼性のもとに口腔内超音波診断法によるDOI評価の精度について、DOI が10 mm以下の場合には病理組織学的深達度との比較において正確な評価が可能であることを明らかにし、第39回日本口腔腫瘍学会学術大会優秀ポスター賞を受賞することができた。 また、音響カップリング材の使用状況についてレビュー研究を行い、英文誌に掲載された(Hayashi T, Takamura M, Kobayashi T, Nikkuni Y, Katsura K. Regarding the acoustic coupling medium for the estimation of the depth of invasion in tongue squamous cell carcinoma on intraoral sonography with special reference to the interpretation of normal mucosal structure: a literature review. Oral Sci Int. 2021: doi: 10.1002/osi2.1110.)。 ただし、新型コロナ感染拡大防止のため研究打合せを控えざるを得ない状況が増え、探触子や音響カップリング材の最適化の検討について、当初予定よりも遅れる結果となっている。
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今後の研究の推進方策 |
多施設共同研究の結果、各施設における超音波DOIと病理組織学的DOIの誤差の比較では施設間に有意差が認められた。いずれの施設も共通してホッケースティック型探触子が使用されていたものの、音響カップリング材やプローブカバーは各施設のプロトコルに則って走査が行われており、これらの撮影条件の違いが有意差の原因となった可能性が示唆された。 また、レビュー研究の結果としても、カップリング材使用の標準化を推進する必要が示唆された。さらなる撮影条件の統一を図る必要があることが示唆されたことから、令和3年度(2021年度)は引き続き音響カップリング材やプローブカバーの最適化を含めた標準化の方策を検討することとしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度(2020年度)は新型コロナ感染拡大防止のため研究打合せを控えざるを得ない状況が増えたことで、オンラインでは対応しきれないような、探触子と音響カップリング材の製造・評価に関わる研究協力者との間での口腔内超音波検査に適した探触子の性能と形状の見直しや音響カップリング材の材質や形状の最適化の具体的な検討について、当初予定よりも遅れる結果となってしまった。 このため、期間延長を申請し令和3年度(2021年度)に探触子とカップリング材の包括的な標準化の完遂を図ることとした。
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