研究実績の概要 |
進行性下顎頭吸収 (PCR)は、原因不明の進行性の下顎頭吸収とそれに伴う同部の体積の著明な減少が短期間で生じる後天性疾患である。本研究ではPCRと類似した下顎頭骨吸収を自然発症するSTR/ortマウスを用いて下顎頭吸収のメカニズムを解析し、また咀嚼筋・腱・靭帯特異的に炎症、硬化を誘導し、咀嚼筋にかかる力を変化させた遺伝子改変マウスをもちいて下顎頭骨吸収を観察し、PCRの病態と発症原因を解明した。①野生型Str/ortマウス②[-1AlaTIMP3] Str/ortマウスを用いた。10週齢(若年)、20週齢(成人)、40週齢(高齢)の歴齢で、下顎骨を,マイクロCT装置Skyscan 1172 (Skyscan, Kontich, Belgium)を用いて観察した。下顎頭について解像度5μmで、骨吸収状態を形態や骨密度(BV/TV%)などを評価した。下顎骨形態について解像度20μmで、下顎枝高径や下顎体長などを測定した。下顎頭骨変形と下顎骨全体との形態の関連性についても評価した。また、[-1AlaTIMP3] Str/Ortマウスを用いて,下顎頭吸収の軟骨破壊におけるADAMTSの 役割の解明と[-1AlaTIMP3]の吸収抑制効果を検証した。さらに、マウスのear notchからProteinase Kを用いてgenomic DNA を採取し、[-1AlaTIMP3]の発現量を評価した。野生型STR/Ortマウスの20周齢から軟骨破壊が認められ、40週齢でOAが進行していた。MMP-12,IL-6,ADAMTS4,5の発現が軟骨破壊に伴い、免疫染色で高発現していた。この結果をBiomedical Reports 誌に報告した。[-1AlaTIMP3]によって、下顎頭の軟骨破壊が抑制されている印象であるが、現在、[-1AlaTIMP3]遺伝子導入マウスについては、CT値の解析、サフラニンO染色や免疫組織学的染色を用いて軟骨破壊の状態を確認中で、次年度からの研究に引き続いて行う予定である。
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