研究実績の概要 |
片頭痛は反復性の激烈な頭痛発作を主症状とするだけでなく、光過敏や音過敏、アロディニアといった感覚症状や悪心嘔吐などの自律神経症状を特徴的な随伴症状とする複雑な疾患である。これら随伴症状のうち悪心嘔吐は片頭痛の急性期に発生し、その症状は激烈であり、片頭痛患者のQOLはさらに阻害される。片頭痛の発症メカニズムそのものが未だ十分に確立されていないが、三叉神経血管系及び大脳皮質拡延性抑制(Cortical Spreading Depression, CSD)との関与が最も有力だといわれていることより、随伴症状の発生にもCSDが関わっている可能性が推測される。そこで、本研究では、片頭痛の特徴的な随伴症状の一つである悪心嘔吐に焦点をあて、片頭痛発症時における悪心嘔吐発生メカニズムについて、CSD動物モデルを用いて明らかにすることを目的とした。 今までの実験より、CSDにより痛覚伝導路の一次中継核である三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)および上部頚髄(C1-2)だけでなく、悪心嘔吐中枢への伝達経路である延髄最後野(AP)および孤束核(NTS)におけるc-Fos発現が増加する、つまり活性化されることが示唆された。この結果をもとに、制吐薬であるメトクロプラミド(ドパミンD2受容体拮抗薬)、グラニセトロン(5-HT3受容体拮抗薬)、アプレピタント(NK1受容体拮抗薬)の影響について検討した。その結果、3種類それぞれの薬物投与で有意にCSD発生数が減少し、APおよびNTSにおけるc-Fos発現が有意に減少した。一方、VcおよびC1-2におけるc-Fos発現はメトクロプラミドでのみ有意に減少し、他の2剤では有意な減少を認めなかった。
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