研究課題/領域番号 |
18K09770
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
筑井 徹 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10295090)
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研究分担者 |
川野 真太郎 九州大学, 大学病院, 講師 (00398067)
吉浦 一紀 九州大学, 歯学研究院, 教授 (20210643)
北本 江梨奈 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40760476)
山下 泰生 九州大学, 大学病院, 診療放射線技師 (70380516)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | non-Gaussian分布 / gamma distribution model / 拡散強調像 |
研究実績の概要 |
本本年度は、拡散強調像のnon-Gaussian分布による解析を主に行った。
第一に既存のデータEPI-DWIの画像を対象に行った。灌流と拡散に分離するbi-exponential model (IVIM model)、制限拡散を考慮したdiffusion kurtosis model (DKI model)、統計学的モデルの一種であるgamma distribution model (GD model)を適応した。GD modelは、トータルの拡散を細胞内拡散(f1成分)、細胞外拡散(f2成分)、灌流(f3成分)に区分することが可能で、病理との関連をつけやすいといった点で最近注目され始めたモデルである。頭頸部において、DKI modelで得られる拡散尖度は、良悪性で有意差を認めるものの、日常臨床で使用されるGaussian分布に比較し診断能を向上させるものでは無かった。一方、統計学モデルでは、f1成分は、悪性リンパ種が最も大きく、扁平上皮癌、腺系悪性腫瘍で比較的大きく、多形腺腫や脈管系腫瘍の良性腫瘍では小さいという結果で、病理の結果を反映する特徴的なものであった。またIVIM modelの真の拡散係数(D)と強い負の相関を示すことが明らかになった。f3成分は、悪性リンパ腫で小さく、脈管系腫瘍で大きいといった結果であり、IVIMの灌流の割合(f)と強い相関を示した。
第二に症例蓄積中であったTSE-DWIにおいても70症例集まったため、同様の解析を行った。f1とDとの強い負の相関、f3とfの強い正の相関、病変ごとの代表的パラメーターなどEPI-DWIの結果とほぼ同様であった。また、TSE-DWIは磁化率の影響を受けにくくEPI-DWIより解析できる症例の割合が多いことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和年度は、GD modelをはじめとして、DWIに対して複数のモデル解析を行える環境を整備し、EPI-DWI, TSE-DWIに適応した。GD modelとIVIM modelのデータを比較してみるとf1とDの強い負の相関、f3とfの強い正の相関などの妥当な結果と思われた。またEPI-DWI、TSE-DWIともf1成分は、悪性リンパ種>扁平上皮癌、腺系悪性腫瘍>多形腺腫>脈管系腫瘍、f3成分は、脈管系腫瘍で大きく、悪性リンパ腫で小さい等といった共通の結果となった。最近使用できるようになったTSE-DWIに関しても、EPI-DWIと同様の結果となったことより、磁化率アーチファクトの影響を受けやすい頭頸部でも、多くの症例で高度な解析が可能である事を示すことができた。
さらにダイナミック撮像の高速化のために、新しい画像再構成原理をあるcompressed sensingを使用した高速撮像に取り組んだ。静止画では、すでに完成し、日常臨床の診断に貢献している。さらに、ダイナミック撮像法の改良を試み、Dixon法を併用する事により、より高時間分解能で磁化率アーチファクトの少ない画像を取得できるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、確立したダイナミック撮像法を元に、得られた画像から薬物動態解析を行うための環境を整備する。当教室では、以前から薬物動態解析を行っていたが、使用装置が、1.5Tから3.0Tに変更したことや画質向上のため脂肪抑制法を変更したことなどより、若干の修正、改善が必要となる。
薬物動態解析を行った後は、DWIから得られた各モデルのパラメーターの関心領域ベースおよびピクセルベースでの比較検討を行い、非造影のDWIでえられる情報が、造影ダイナミック画像をもとにした薬物動態解析とどのような関連があるのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
dynamic MRの解析するためのPCやソフトの購入を他研究者が新たに獲得した研究費で賄えた事、さらに演題採択されていたECRがコロナウィルスの蔓延のため延期となり、海外出張費が残った事が原因である。
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