研究課題
平成30年度は高悪性OSCC、特に放射線耐性OSCC細胞由来エクソソームに特徴的なタンパ遺伝子発現プロファイルの解明とエクソソームが周囲細胞に与える影響についてin vitroで解析を行った。高悪性OSCC細胞株の一つである放射線耐性OSCC細胞株および親株のペアにおいて培養上清中のエクソソームを様々な方法で抽出した。抽出したエクソソームの品質を電子顕微鏡、ウェスタンブロッティング、ELISAにて確認し、以降の実験に供するに足るエクソソームの抽出方法を確立した。放射線耐性細胞株およびその親株のエクソソームを抽出し、エクソソーム由来miRNA発現をmiRNAマイクロアレイ(3D-Gene Human miRNA Oligo chip-4 plex)で解析し、特徴的miRNAプロファイルを明らかにした。また、抽出されたmiRNAの一つは化学放射線療法放射線療法が不応であったOSCC患者の血清中で発現が上昇しているmiRNAであることを明らかにした。特に、患者血清中の特徴的miRNA発現については原著論文として国際学術雑誌であるTumor Biologyに投稿・掲載された。放射線耐性OSCC由来エクソソームが親株である放射線感受性細胞やに及ぼす影響を解析した。放射線未照射、放射線照射後、あるいは照射後の時間など複数の条件を振ってエクソソームを抽出した。抽出した各エクソソームを放射線耐性OSCC細胞株の親株である放射線感受性OSCC細胞の培養上清に混和し、様々な悪性形質の変化を観察した。結果、放射線感受性増殖能や浸潤能に大きな差は認めなかったが、親株である放射線感受性細胞の放射線感受性が低下していることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
平成31年度以降に必要なエクソソーム抽出に関する基礎的な実験は終了することができた。そして、その一部を国際学術雑誌へ投稿・受理されるに至った。また、今年度は放射線耐性OSCC細胞由来のエクソソームに含まれるmiRNAの発現プロファイルを解析までを終えることが出来た。更に、抽出したエクソソームが培養細胞に与える影響を解析することができ、当初の研究計画は概ね予定通り進んでいると考える。
今後は、今年度得られたデータを元に放射線耐性OSCC細胞に特徴的なタンパク質の発現プロファイルや培養細胞で見られた形質変化がどのような分子機構で制御されているかを更に詳細に解析していく予定である。具体的には、高悪性OSCC由来エクソソームが周囲腫瘍細胞や間質細胞に及ぼす影響を解析する。対象とする培養細胞はOSCC細胞株、不死化線維芽細胞株、血管内皮細胞などである。エクソソームは蛍光色素PKH67などでラベルし、エクソソームの取り込みの有無や程度を評価可能とする。エクソソーム取り込み後、OSCC細胞については増殖能、遊走能、浸潤能、抗癌剤・放射線耐性の評価、間質細胞については増殖能、管腔形成能などを評価する。また、共培養の系を用いてエクソソームに”教育”された間質細胞がOSCCにどのような形質変化を与えるか明らかにする。一方、形質変化に関わる分子ネットワークを遺伝子・タンパク質レベルの両面で網羅的解析を駆使して明らかにする。
当初の予定よりも順調に実験が進んだため、物品費が抑制できたことが要因である。次年度はタンパク質の網羅的解析や追加で網羅的遺伝子発現探索が必要である。更に、機能解析についても次年度はより消耗品が必要となることが予想されることから、同費用に充てるものとする。
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Tumor Biology
巻: 41 ページ: 1-10
10.1177/1010428319826853.