研究課題/領域番号 |
18K09771
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉田 遼司 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (10632458)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔がん / エクソソーム / 腫瘍微小環境 / 放射線耐性 / アポトーシス / DNAダメージ |
研究実績の概要 |
平成31年度(令和含年度)は前年度までの研究で明らかとなった、放射線耐性口腔がん細胞株由来エクソソームによる獲得耐性について、in vitroにおける解析を中心に研究を行った。 まず、放射線耐性口腔がん細胞由来のエクソソームによって放射線抵抗性が獲得されていることを再検証し、DNAダメージ修復およびアポトーシス経路が関わっている可能性を見出した。更に、エクソソームが実際に細胞内に取り込まれて放射線耐性を獲得していることを、蛍光色素でラベリングした放射線耐性由来エクソソームを用いて明らかにした。前年度までに、放射線耐性口腔がん細胞由来エクソソーム内において特定のmicroRNA発現に変化があることを見出していたことから、候補microRNA(miR-X)を細胞内へ導入し、エクソソーム作用時と同様の形質変化が現れるかを検証した。その結果、miR-X導入においても同様の放射線耐性が獲得されていた。 上記の結果を踏まえ、放射線耐性口腔がん細胞由来エクソソームがどのような分子メカニズムを経て耐性を獲得しているかをプロテインアレイおよびcDNAマイクロアレイにて解析し、抗アポトーシス蛋白の発現制御が深く関わっていることを見出した。 更に、当科で放射線治療を行った患者の血液検体中のmiR-Xの発現と放射線の治療効果との相関を検討したところ、両者に有意な相関関係を認めた。また、患者予後についてもmiR-X発現との間に相関関係を見出した。 これらの成果は、国内の主要な口腔外科関連あるいはがん関連学会で学会発表し、研究最終年度となる令和2年度中に国際学術雑誌へ投稿を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに得られた予備的研究の結果を基に、放射線耐口腔がん細胞由来エクソソームおよびエクソソームに内包されるmicroRNAによる放射線耐性獲得を多角的に実証することが出来た。また、網羅的解析を行ったことで、放射線耐口腔がん細胞由来エクソソームによって獲得される放射線耐性の分子機構の一端を明らかにすることが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに放射線耐性獲得の分子機構の一端を明らかにすることが出来ている。今後は、その分子機構の詳細な解析を行う予定である。また、これまでの研究は放射線耐性口腔がん細胞から人為的に抽出したエクソソームを用いており、生体内あるいは共培養下でも同様の事象が再現できるかは不明な点がある。したがって、最終年度ではGFPなどの蛍光蛋白で細胞内のエクソソームを標識する系を立ち上げ、放射線耐性細胞およびその親株をin vitroあるいはin vivoで共培養し、エクソソームの挙動を明らかにする予定である。しかしながら、コロナウイルス感染拡大に伴い研究資材や実験動物の搬入に制限があり、研究計画の遂行に当たっては、適宜購入元企業を変更、実験動物については他講座との協力を検討する必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き、順調に研究成果を得たことが使用助成金の抑制につながったと考えられる。研究最終年度にはエクソソームの挙動を追跡するシステムの構築や、現在明らかとなっている分子機構の詳細な解析、研究成果の国際学術雑誌への投稿を控えていることから、余剰分についてはその費用に充てるものとする。
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