口腔扁平上皮癌(OSCC)は、口腔に最も高頻度に発生する悪性腫瘍である。治療法の進歩にも関わらず、大幅な予後改善はみられない。これには治療抵抗性を示すOSCCの存在が挙げられる。今回我々は、OSCCの放射線抵抗性について。細胞間コミュニケーションのメディエーターである細胞外小胞(Extracellular vesicles: EVs)および内包されるmiRNAに着目して研究を行った。SAS細胞から樹立された放射線抵抗性OSCC細胞株(SAS-R細胞)からEVsを抽出した。SAS-R細胞から抽出したEVs(SAS-R EVs)をSAS細胞に投与し、細胞動態および放射線感受性を検証した。SAS-R EVsにおけるmiRNAの発現プロファイルと放射線抵抗性を示した患者血清におけるmiRNAの発現プロファイルを比較検証し、両者に共通して発現上昇を認めたmiR-503-3pをピックアップした。miR-503-3pをSAS細胞に導入し、放射線感受性を検証した。また、術前化学放射線治療を施行された55例における血中miR-503-3p発現を検証した。SAS-R EVsを投与したSAS細胞の放射線耐性は有意に上昇した。同様に、miR-503-3pを導入したSAS細胞の放射線耐性も有意に上昇した。SAS-R EVsおよびmiR-503-3pはBAKの発現を抑制し、カスパーゼカスケードを阻害することで、SAS細胞における放射線誘発アポトーシスを抑制していた。さらに、OSCC患者における血中miR-503-3pの発現は、放射線治療の予後不良に相関していた。EVsに内包されるmiRNAを介した細胞間コミュニケーションが強く関与しており、血中miR-503-3pは、口腔癌における放射線治療効果予測および患者予後予測マーカーとなる可能性が示唆された。以上の成果は、国際学術雑誌に論文投稿中である。
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