研究課題/領域番号 |
18K09772
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
高 裕子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10816119)
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研究分担者 |
桑原 義和 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (00392225)
佐藤 友昭 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10284887)
並河 英紀 山形大学, 理学部, 教授 (30372262)
西谷 佳浩 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (60325123)
富田 和男 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (60347094)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 過酸化水素 / がん / 酸化ストレス / 細胞膜 / アクアポリン |
研究実績の概要 |
本研究ではがん細胞の放射線抵抗性メカニズムを解析するため、放射線に抵抗性の細胞(CRR細胞)と感受性の細胞(ρ0細胞)における酸化ストレス応答機構の解析と細胞膜状態との関係に焦点を絞り研究を行っている。昨年度の研究結果より、CRR細胞とρ0細胞では膜の透過性および耐性機構に差異が生じていることが示されたため、さらに細胞膜の構成成分の変化と過酸化水素の取り込み量の関係・過酸化水素処理後の細胞内活性酸素種の発生量について検討した。材料としてヒト子宮頚部がんHeLa及びヒト舌がんSAS細胞由来のρ0細胞およびその親株細胞を使用して実験を行った。 現在までに次の1)、2)の結果が得られた。 1)リポソーム膜モデルを用いた脂質の密度・酸化度合いと過酸化水素取り込み量の検討 :西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)とルミノールを内包し作製された脂質膜に過酸化水素を添加すると時間経過とともに発光強度が増大することが確認された。細胞膜脂質の主要な構成成分であるDOPCと酸化脂質であるPOVPCの割合を変化させたリポソーム膜モデルにおいて過酸化水素の取り込み量を調べ、過酸化水素の細胞内への取り込みが細胞密度や膜の過酸化状態に依存しているのか検証を行った。その結果、酸化脂質添加数%までは脂質の酸化度が高いほど過酸化水素取り込み量の増加が認められた。実際、過酸化水素処理前に細胞へPOVPCを添加したところ、CRR細胞では過酸化水素処理による細胞死が増加した。 2)過酸化水素処理後の細胞内活性酸素量の検証 :過酸化水素を添加後、活性酸素の一種で反応性が高いヒドロキシラジカル量をその検出試薬であるHPFを用いて測定した。ヒドロキシラジカル量はρ0細胞では親株細胞と比較して増加しており、逆にCRR細胞では親株細胞よりも減少していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に記載した通り、CRR細胞とρ0細胞において、リポソーム膜モデルを用いた過酸化水素の取り込み量の結果および過酸化水素処理前に酸化脂質を添加した場合の過酸化水素処理の結果より、過酸化水素の細胞内への取り込みが細胞密度や膜の過酸化状態に依存しているとの検証ができたため。また、過酸化水素処理後の細胞内活性酸素量の結果より、CRR細胞、ρ0細胞での細胞死のメカニズムに関してさらなる解析が進んだため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の1年間の研究期間において、下記の3項目を行う予定である。 1)細胞膜構成要素の発現解析と突然変異の解析:膜機能タンパクであるアクアポリンのタンパク質量発現の解析、突然変異の解析を行い、発現変化もしくは突然変異が見られた遺伝子について、発現抑制を行い感受性の変化を検討する。 2)過酸化水素処理後の細胞内活性酸素量の検証:過酸化水素を添加後の各活性酸素種の発生量について、広く活性酸素を検出する蛍光プローブであるジヒドロエチジウム、ミトコンドリアの活性酸素種検出試薬であるMitoSOXなどを用いてその発生量の半定量解析を行う。 3)細胞内およびミトコンドリア内の鉄動態の解析:細胞内で過酸化水素と反応し、細胞死を誘導するヒドロキシラジカルを生じる鉄動態について、細胞内の二価鉄をFerroOrange、ミトコンドリア内の二価鉄をMitoFerro-Greenを用いて測定する。また鉄結合タンパクであるフェリチンの遺伝子発現について解析する。さらに、過酸化水素処理前に鉄キレート剤を添加した場合の細胞生存率についても検討する。
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