研究課題
テロメラーゼはテロメア反復配列(TTAGGG)を染色体末端に伸長させる酵素であり、癌細胞型の80%以上で過剰発現を認めるため、抗癌剤の新たな標的として期待される。本研究では、テロメア反復配列が細胞内で4本鎖構造を形成することに着目し、4本鎖DNA構造への特異性を向上させた新規化合物について、複数の口腔癌由来細胞株および正常細胞に対する影響を比較検討した。口腔癌由来の細胞株に対して、テロメアを標的とした性質の異なる種々の化合物を作用させた。テロメラーゼの遺伝子発現や活性と比較的相関の認められた化合物2種に焦点を当てて実験を進めた。RT-PCR 及びリアルタイムPCRによって解析した各細胞のhTERT発現量とTRAP 法によるテロメラーゼ活性、細胞増殖抑制効果の程度はおおよそ相関関係にあった。ヒト正常角化上皮細胞やマウス骨髄細胞と癌細胞に対する各化合物の細胞増殖抑制効果を比較すると、濃度作用曲線で大きな差を認め、癌細胞に対して高い効果を有していた。ヌードマウスにおける異所性腫瘍形成は想定よりも形成効率が低く、適切な細胞株の選定や接種方法の検討を続けている。臓器の摘出と切片作成・組織染色等の手技は概ね確立した。テロメアDNA配列を標的とした新規化合物は、正常細胞と比較して癌由来の細胞株に対して強い増殖抑制効果を示した。その効果は各細胞株のテロメラーゼ発現量と相関関係にあった。ヌードマウスの異所性腫瘍形成のモデルを用いる実験は、腫瘍形成効率や化合物の安定性に関する予備実験を開始したところである。
2: おおむね順調に進展している
実験計画に沿った進捗状況であり、期待された実験結果を得ている。
培養細胞を用いる実験では良好な結果が得られているので、ヌードマウスを用いた実験系の条件検討などを進め、個体レベルで化合物の抗腫瘍効果や有害作用などを検討する。
前年度に引き続き、テロメアDNA配列を標的とした化合物の抗癌作用の解析に関する研究を進めていくため。
すべて 2018
すべて 学会発表 (3件)