研究実績の概要 |
中脳辺縁系dopamine(DA)神経の主な投射先である側坐核には,青斑核や延髄からnoradrenaline(NA)神経も入力している。側坐核にはacetylcholine(ACh)性介在神経があり,α受容体subtypeの非選択的なagonistとantagonistはいずれも側坐核のACh神経活動に依存したラットの移所行動を抑制する(Ikeda et al., 2007)。側坐核にはα2受容体が分布しているが,この受容体は同部位のDAとNA放出の制御には関与しない可能性を我々は報告した(Saigusa et al., 2012)。しかし,α2受容体が側坐核のACh放出の制御で果たす役割は明らかでない。そこで当該年度は,α2受容体のagonistのUK 14304とantagonistのRX 821002がラットの側坐核の細胞外ACh量に及ぼす影響についてin vivo脳微小透析法により検討した。 実験にはS-D系雄性ラット(体重約200 g)を用いた。無麻酔非拘束の条件下でin vivo脳微小透析法により側坐核から回収した細胞外液中のAChは15分毎にHPLC-ECD法により測定した。使用薬物は透析プローブから逆透析で側坐核に60分間灌流投与した。α2受容体ligandの投与量は灌流液中の総量(mol)で示した。 その結果,α2受容体agonistのUK 14304(300 pmol)はAChを約30%減少させた。α2受容体antagonistのRX 821002(600および6000 pmol)はAChを約75%増加させた。UK 14304によるAChの減少を基礎的なACh量に影響を与えない用量のRX 821002(0.6 pmol)は抑制した。以上のことから,側坐核のα2受容体はACh放出を抑制的に制御することが示唆された。
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