研究課題/領域番号 |
18K09784
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
倉林 亨 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (60178093)
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研究分担者 |
坂本 潤一郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (40506896)
中村 伸 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (70323699)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MRI / 口腔 |
研究実績の概要 |
拡散テンソルMRI (Diffusion Tensor Imaging, DTI)は、生体内水分子の拡散の異方性を解析するMRIの手法である。神経や筋ではその線維束の方向に沿った異 方性拡散が見られることが知られており、DTIを利用したトラクトグラフィと呼ばれる手法を用いてその線維構造を可視化することも可能である。本研究課題は口腔領域の疾患に対するDTIの有用性を確立することを目的としており、当該年度は口腔癌の診断におけるDTIの有用性を評価することを目的として、学内の他の分野と共同で研究を行った。対象とした症例は、手術によって病理学的な診断が得られた36例の口腔癌症例であった。DTI撮像法はスピンエコー系シングルショットエコープラナー (SS-EPI)法とし、撮像パラメータは次のとおりとした:TR/TE= 10200/94 msec、 FOV=250x204mm; matrix 120x98、スライス厚= 4mm, gapless、MPG=12軸、b値=0および1000s/mm2。DTIの撮像時間は約2分40秒であった。 本研究によって得られた主な結果は、次のとおりであった。1) 口腔癌のFA値の平均値は 0.275であり、これは周囲の正常軟組織(舌, 筋)と比較して有意に低かった。2) 転移LNのFA値の平均値は0.186であり、これは非転移LNと比較して有意に低かった。3)FA値以外にも診断に有用ないくつかのパラメータが明らかとなった。 以上の結果から、口腔癌症例に対するMRI検査では、DTIを追加することによって診断能の一層の向上が期待できると考えられた。今後更に検討を進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記のように当該年度は一定の成果を得ることができたが、予定していた国際および国内学会がコロナ禍のために中止または延期となり、研究成果の発表を行うことができなかった。また前年度に引き続き舌筋の可視化にも取り組んだが、前年度以上の成果を得ることはできなかった。以上の理由から(3)の評価が妥当であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
DTIの口腔領域への応用について更に研究を継続すると共に、今年度と同様に、得られた研究成果の臨床応用を最終的な目標としたい。すなわち舌を対象としたDTIは舌癌の深達度の評価に利用できる可能性がある。また咀嚼筋のDTIは顎関節疾患の重篤度評価や治療効果の判定に応用できる可能性がある。これらの研究を完成させ、画像診断の分野から歯科医療の発展に貢献したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために成果発表を予定していたいくつかの学会が中止または延期となったため、出張旅費や学会参加費、展示原稿製作費、英文添削費等の支出が不要となった。 最終年度となる翌年は、国際学会や国内学会での成果発表のための出張旅費等を含め、有効に助成金を使用する予定である。
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