研究実績の概要 |
近年、局所的に炭酸ガスを効率的に吸収させることのできる炭酸ガス投与法を開発し、それを扁平上皮癌に応用した。その結果、腫瘍内の低酸素環境改善やミトコンドリア経路のアポトーシスの活性化によって癌の増殖抑制が起こることを発見した。さらに、上皮間葉移行(EMT)低下によるリンパ節転移の抑制がおこることを確認した。本研究の目的は、この局所的炭酸ガス投与を応用し、既存治療の副作用軽減効果を調査し、低リスク・低コストの新規口腔癌治療の開発を目指すことである。in vitroにおける研究で、細胞レベルでは、HSC-3は照射線量の増大に伴いコロニー数の減少を認め、IC50は5.0 Gyであった。そして5.0 Gyを照射したHSC-3において、活性酸素関連因子(ROMO-1)とアポトーシスにおける関連性が示唆された。in vivoの研究において、5週齢のヌードマウス背部にHSC-3を皮下移植し、各治療法別(control群、RT群、CO2群、RT+CO2群)に検討した。局所的炭酸ガス投与は、われわれが過去に報告した方法で行った。各群より腫瘍を採取し、RNAを回収し、Real-time PCR法で計測した。RT+CO2群で、RT群に比較し、腫瘍の増加抑制効果を認め、低酸素誘導因子(HIF-1α)の減少、アポトーシス関連因子(PARP, Caspase3, 8, 9)の増加、さらに活性酸素関連因子(ROMO-1)の増加を認めた。また、体重変化は4群とも有意な差はなかった。さらに、骨髄抑制の副作用はRT単独群で、もっとも増加し、RT+CO2群である併用群ではむしろ改善傾向であった。したがって、経皮的炭酸ガス投与は口腔扁平上皮癌に対し腫瘍内低酸素環境を改善し、放射線治療と併用することで腫瘍縮小効果の増大が期待できることや副作用軽減効果があることが示唆された。
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