研究課題/領域番号 |
18K09789
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中野 敬介 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (10325095)
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研究分担者 |
長塚 仁 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (70237535)
高畠 清文 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (70736537)
河合 穂高 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10803687)
江口 傑徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (20457229)
辻極 秀次 岡山理科大学, 理学部, 教授 (70335628)
志茂 剛 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (40362991)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 癌間質 / 口腔癌 / 癌化 / 扁平上皮癌 / 相互作用 / 腫瘍微小環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、口腔癌の間質が癌細胞に作用して、癌の生物学的性質を変化させることの検証、および、癌間質が癌の周囲の正常細胞に働きかけて癌化を引き起こす可能性を検証することである。令和2年度では口腔扁平上皮癌細胞株と間質細胞の組合せによる培養、腫瘍間質の違いによる腫瘍細胞の生物学的性格(増殖能、浸潤能、遊走能、形態)に与える影響を令和元年から引き続いて検討した。腫瘍細胞株は高浸潤癌:HSC-2、低浸潤癌:SAS、対照細胞: HaCaT細胞を用いた。間質組織は岡山大学病院手術摘出材料から高浸潤癌症例、低浸潤癌症例を選定して用いた。由来の異なる癌間質を癌細胞株と共培養し、また同複合体をマウス皮下に移植した。その結果、腫瘍組織は癌の間質の違いによって大きくその性状を変化させることが示された。培養系を用いた検討では共培養する間質細胞の違いにより癌細胞に対する遊走、増殖能が変化するのみならず、腫瘍細胞の分化度が変化することがin vitroで確認できた。癌細胞と間質複合体の移植実験では組織学的および免疫組織化学的検討を行い、癌細胞の増殖と分化の様相が間質細胞によって影響されることが明らかになった。移植実験系では腫瘍間質に出現する特殊な細胞の動態の解明が進んだ。この点については今後さらに追及していく予定である。本年度の研究結果は、癌間質が直接的に癌の生物学的性格を調節していることを強く裏付けるものである。この研究結果は癌間質に注目した癌の治療戦略に結び付く非常に重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度に予定していた主要な検討項目として、細胞培養系を用いたヒト扁平上皮癌組織の性格の検討、および、移植モデル実験系を用いた病理組織学的な研究を実施できた。細胞レベルでの腫瘍間質が腫瘍に与える影響、生体内における腫瘍間質が腫瘍細胞に与える影響について検討を行うことができた。またこれらの成果を関連学会及び学術雑誌上で報告をおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度の研究結果では癌間質の特殊な性格が明らかになった。この癌間質の特性は癌細胞の移植実験系において組織学的検討を行うことにより明確となったものである。そこで、腫瘍間質の持つ特殊な性格を”病理組織学的に明らかにする”ことを昨年に続き推進方策の基盤とする。今回明らかになった癌細胞への影響を与える腫瘍間質の特殊な性状についてさらに組織学的な検討を行いその詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症により研究活動が大きく影響を受け、当初予定していた病理組織学的検討が困難となった。従って研究期間延長申請を行い、令和2年度に行う予定であった研究を令和3年度で実施し、次年度使用額をその経費に充てるものとする。
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