研究課題/領域番号 |
18K09791
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
杉山 勝 広島大学, 医系科学研究科(歯), 名誉教授 (70187681)
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研究分担者 |
重石 英生 広島大学, 医系科学研究科(歯), 講師 (90397943)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HPV16 / 癌幹細胞 / 口腔癌 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
(1)HPV16 E6/E7発現と癌幹細胞形質の関係:HPV16陽性扁平上皮癌の癌幹細胞形質を明らかにするため、HPV16 E6/E7陽性の扁平上皮癌細胞を用いて検討した。その結果、HPV16 E6/E7陽性細胞のスフィアコロニー形成はE6/E7 siRNA knockdownにより抑制された。以上より、コロニー形成にはE6/E7が重要であることが示唆された。 (2)HPV16陽性例の口腔内細菌叢:大学病院を受診した患者(60歳以上の女性)を対象に、口腔のHPV16 DNAと歯周病の関係を検討した所、HPV16 DNA陽性率と歯周ポケットのプロービング時の出血との間に有意な関連を認めた。さらに、6㎜以上の歯周ポケット及びプロービング時の出血を認めた患者で口腔内細菌叢を検討した所、HPV16 DNA陽性例では陰性例と比較して、Porphyromonas属の割合が有意に高かった。一方、HPV16 DNA陰性例では陽性例と比較して、Veillonella属の割合が有意に高かった。 (3)口腔内HPV感染リスクファクター:健常者のHPVの口腔内感染を調査した疫学研究を基に、HPV感染のリスクファクターを同定するためメタ解析を行った結果、喫煙は口腔のHPV感染における重要なリスクファクターであることが明らかとなった。さらに、最新の疫学研究や基礎的研究の結果を基に,口腔のHPV感染の危険因子や,口腔癌におけるHPV陽性率及びHPV陽性口腔癌の分子生物学的特徴について検討した結果、口腔癌におけるHPV DNA陽性率は6.0~27.5%で,高リスク型HPVの中では,HPV16が高い陽性率を示した。口腔癌では,E6, E7 mRNAの陽性率は数%であり、HPV DNA陽性率と比較しても低いため、HPV関連口腔癌において、E6, E7の安定高発現を介さない悪性形質の獲得機構の存在が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究から、口腔内の衛生状態とHPV16感染には関連がある可能性が示唆された。今後さらにHPV16陽性例における口腔内細菌叢の検討や口腔扁平上皮癌患者におけるHPV E6/E7 mRNAの検出を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
①口腔扁平上皮癌患者および健常者の口腔内擦過物を用いたHPV E6/E7 mRNAの検出 口腔癌患者および健常者の口腔内から擦過物を採取し、HPV E6/E7 mRNAと臨床病理学的指標との関係を検討する。 ②歯肉溝浸出液を用いたHPV16 DNAの検出 ペーパーポイントを用いて採取した歯肉溝浸出液を用いて、HPV16 DNAの検出を行い 、HPV16 DNAの陽性率と歯周組織の状態との関係を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)HPV16 DNAの検出に使用した試薬が予定金額を下回ったため。 (使用計画)次年度使用額については、HPV16 DNA発現検索のためのPCR用試薬や16SrRNAシークエンス解析に必要な試薬の購入に充てる計画である。
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