研究課題/領域番号 |
18K09793
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
北村 直也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 講師 (70351921)
|
研究分担者 |
松崎 茂展 高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 准教授 (00190439)
山本 哲也 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 教授 (00200824)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 抗菌薬耐性 / バクテリオファージ / ファージ療法 |
研究実績の概要 |
抗菌薬が広く用いられるようになって約80年が経過した現在、抗菌薬耐性(AMR; Antimicrobial resistance)の問題が世界中で深刻化し、「Post-Antibiotic Era」の到来が懸念されている。AMR菌の蔓延を打開するためには、AMR菌感染症の治療に資する新しい機序の抗菌薬の研究開発が推進されることに加え、抗菌薬非依存的治療法の導入が有効であると考えられる。後者のひとつとして、細菌に特異的に感染し溶菌活性を発揮するウイルスであるバクテリオファージ(ファージ)を利用した細菌感染症治療法、いわゆるファージ療法が挙げられる。ファージは1917年に発見され、ファージ療法は赤痢、ペスト、コレラ菌の撲滅に多大なる効果を発揮した。1940年頃から感染症に対して抗菌薬が臨床応用されるようになり、ファージ療法は一旦衰退したが、1980年頃よりMRSAなどのAMR菌が蔓延してきたことから、近年、再び脚光を浴びるようになった。 本研究の目的は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRPA)、多剤耐性アシネトバクター(MDRAB)およびカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)を起炎菌とする誤嚥性肺炎モデルに対するファージ療法の有効性を検討することである。 本研究の特色は、ファージ療法の基礎研究から臨床応用に向けた橋渡し研究である点である。独創的な点は、誤嚥性肺炎の動物実験に対してファージを応用したこと、かつAMR菌をターゲットにしたこと、さらにはファージ耐性菌あるいはファージ中和抗体が出現した際の実践的な対応策を講じたことにある。本研究の完遂により、誤嚥性肺炎に対するファージ療法の臨床応用に向けたファーストステップが確立されるとともに、他の多くのAMR菌に起因する感染症に対しても、ファージ療法の実用化への道を開くことになると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画として、①新規ファージの分離、②新規ファージのゲノム解析および治療用ファージの選定、③ファージ耐性菌およびファージ中和抗体への対策、④動物実験によるファージ療法の効果、を挙げた。現在、MRSAおよびMDRPAに対する新規ファージの分離およびゲノム解析がほぼ終了し、近々、DDBJ(DNA Data Bank of Japan)へ塩基配列の登録を予定している。なお、本研究で新規同定したファージは「バクテリオファージの溶菌活性を利用する黄色ブドウ球菌および緑膿菌に起因する感染症、およびそれらによる混合感染症の制御法」として特許申請を行った。よって、本実施状況報告書の公表を1年間(2020年5月1日まで)差し控えることとした。
|
今後の研究の推進方策 |
MDRABおよびCREに対する新規ファージを分離し、ゲノム解析を行うと共に、MRSAおよびMDRPAを含むAMR菌を感染させた動物(褥瘡、糖尿病性足部病変および誤嚥性肺炎モデル)に対するファージ療法の効果を検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度、当初予定していた使用額を下回ったため、次年度に繰り越した。
|