研究実績の概要 |
【背景】近年、口腔内細菌が癌や糖尿病をはじめとする様々な全身疾患と関係することが明らかにされ、その制御が重要視されるようになってきた。しかし、今日多くの病原細菌が薬剤耐性を獲得しているため、抗菌薬非依存的な殺菌・除菌法の開発が重要であると考えた。そこで我々は、口腔内病原細菌のうち薬剤耐性黄色ブドウ球菌をターゲットとしたバクテリオファージ(ファージ)療法の研究に着手し、新規ファージの分離およびそれらのゲノム解析を行った。【方法】高知市および南国市の下水処理場汚水の遠心濾液に黄色ブドウ球菌(SA)およびTSB培地を加えてファージを増幅し、その上清より単一プラーク法を用いて新規のSAファージを11種分離した。それらのファージの中から宿主域(MSSA 7株およびMRSA 23株に対する溶菌率)の広いファージを2種(KSAP7: 93.3%, KSAP11: 100%)選択し、次世代シーケンス法を用いてゲノム解析を行った。【結果】形態はいずれも正二十面体の頭部と収縮鞘を有する尾部で構成されていたことからミオウイルス科に属していた。KSAP7とKSAP11のゲノムサイズはそれぞれ137,950bp、138,307bpで、いずれのファージにおいてもORF10とORF88の2か所で再編が認められ、それらがMembrane protein (ORF10) やTail-related protein (ORF88) を変化させていた。なお、これら2か所の可変領域を有するSAファージは過去に6種報告されていた。【考察】広宿主域を有する近縁のSAファージの全ゲノム解析を行った。ゲノム再編によるORFの変化が宿主域に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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