Melanoma inhibitory activity(MIA)gene familyは分泌タンパクであり、種々のがんの進展に関与している。申請者らも口腔癌においてMIA gene familyが腫瘍促進的な機能を有していることを既に報告している。 最終年度である今年度は、MIA gene familyに関連した新たな分子であるmucin 20(MUC20)についての解析をおこなった。MUC20はムチンの産生に関わる分子であるが、MUC20を遺伝子導入した細胞株ではTc-metのリン酸化が亢進することで細胞増殖能が上昇し、また、細胞接着に関わるE-cadherinの分泌低下と間質の破壊を促進するmatrix metalloproteinase-2(MMP-2)の分泌増加により浸潤能の促進にも関与していた。さらに、MUC20により口腔癌細胞株からのvascular endothelial growth factor-A (VEGF-A)とVEGF-Cの分泌が上昇し、血管/リンパ管内皮細胞の遊走能・増殖能・管腔形成能の獲得ならびに口腔癌細胞株と内皮細胞の接着性増強を誘導することも見いだした。臨床検体による免疫組織化学においてMUC20の陽性率は30.1%(64/213)であり、その発現は臨床病期(Tグレード)、リンパ節転移、微小血管密度(microvessel density;MVD)、微小リンパ管密度(lymphovessel density;LVD)と有意に相関しており、MUC20陽性症例は陰性症例よりも予後不良であった。 以上より、MUC20は分泌タンパクとして作用することで口腔癌における新たな診断・治療標的となる可能性が示唆された。
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