研究課題/領域番号 |
18K09810
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
横田 祐介 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (10448128)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 舌味覚神経 / 体性感覚レセプター / 味覚障害 / 抗がん剤 / 神経生理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、味覚神経における一般体性感覚レセプターを解明することである。舌の味覚神経である鼓索神経および舌咽神経は、味覚刺激のみだけではなく触・圧・冷刺激などの一般体性刺激にも応答し、かつこれら機械的刺激にのみ応答する単一ニューロンをもつことが示唆されている(Yokota and Bradley, 2016 and 2017)。しかし、味覚神経における一般体性感覚ニューロンについてはその詳細が分かっておらず、複合感覚としての味覚を理解するためにもこれらの解明は重要となる。 また近年、術後補助療法として在宅で抗がん剤を内服することが増加しており、副作用としての味覚障害が注目されるようになった。味覚異常による食思低下が引き起こす栄養状態の悪化が、がん治療そのものに影響を与えるためである。2018年度からは、消化器外科による胃癌術後の抗がん剤治療によって生じる味覚障害についての臨床研究にも参画しており、臨床ならびに基礎的研究を同時並行で行っているところである。 本研究は、舌味覚神経における一般体性感覚のレセプターを解明することであるが、その前段階としてラットおよびマウスにおいて、鼓索神経ならびに舌咽神経からの安定した神経活動を記録する必要がある。研究環境の整備および無傷で神経を剖出するテクニックの向上により、ラット鼓索神経から安定した神経活動を記録することが可能となった(whole nerve recordings)。 現在、これまでの基礎研究から想定される各種レセプターに対してブロッカー(アンタゴニスト)を投与し、投与前後での応答変化を検証しているところである。この検討により、触・圧・冷覚といった一般体性感覚に関するレセプターを同定していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関する実験実施場所である大阪大学歯学部研究棟の大規模改修工事が終了し、また新型コロナウィルス感染症による各種の規制も緩和されてきた。実験実施に関する周囲環境が安定してきたため、現在はおおむね予定通り研究を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
実験周囲環境の安定により、剖出したラット鼓索神経から良好な神経活動を記録することが可能となった。現在、予定していたレセプターブロッカー(TRPA1: HC-030031, A-967079, AP18、TRPV1: SB-366791、TRPM8: AMTB、Piezo2: D-GsMTx4 等)の投与を順に行っているところである。より明確なデータが取得できるよう、効果的な薬剤の投与方法や投与経路についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験の実施場所である、大阪大学歯学部研究棟の大規模改修工事により、実験設備等の仮移転が必要となり、研究遂行に遅延をきたしていた。また、新型コロナウィルス感染症への対応や出勤制限、研究室の使用制限などにより、さらに遅延をきたす状態であった。現在は、実験環境も安定し、おおむね予定通り研究遂行ができている状態である。 今後はレセプターブロックを行い、薬剤投与前後での神経活動変化を観察するため、各種アンタゴニストの購入を予定している(HC-030031, A-967079, AP18, SB-366791, AMTB, D-GsMTx4 等)。また、有効な薬剤投与経路を検討する必要があるため、これまでと同様に定期的なラットならびにマウスの購入が必要となる。
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