研究実績の概要 |
本研究の目的は、味覚神経における一般体性感覚レセプターを解明することである。舌の味覚神経である鼓索神経および舌咽神経は、味覚刺激のみだけではなく触・圧・冷刺激などの一般体性刺激にも応答し、かつこれら物理的刺激にのみ応答する単一ニューロンの存在が示唆されている (Yokota and Bradley, 2016 and 2017)。しかし、味覚神経における一般体性感覚ニューロンについてはその詳細が分かっておらず、複合感覚としての味覚を解明するためにもより詳細な解析が必要であると考えられる。 また、ラット膝神経節ニューロンではTRPチャネルファミリーに属するTRPV1、TRPA1そしてTRPM8チャネルの発現が認められており、鼓索神経が物理刺激センサーとしても機能している可能性がある。これらの解析には、チャネルブロッカーを用いたin vivoにおける実験が必須となるが、味蕾を取り囲む特殊な障壁により、局所への表面投与やマイクロインジェクション、そして腹腔内投与法などによる検証が困難であった。そこで本研究では、ラット舌動脈内への選択的動注によってチャネルブロッカーを投与し、TRPV1、TRPA1、TRPM8チャネルが一般体性感覚受容体としてどのように関与しているかについて検討を行った。 実験にはSD系雌性ラットを用いた。前方舌に冷刺激・擦過刺激を加えて、鼓索神経からの刺激応答を記録。TRPチャネルブロッカーをそれぞれ舌動脈内へ選択的に動注投与後、再度冷刺激・擦過刺激を加えて神経応答を記録した。得られた神経応答を積分波形に変換、測定区間における平均積分値を算出し、Paired t-testを用いて統計学的検討を行った。結果、TRPV1、TRPA1、TRPM8チャネルのそれぞれが、冷覚受容体および触覚受容体として複合的に機能していることが示唆された。
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