研究課題
本研究の目的は、研究代表者らのこれまでの研究結果から推測された全身麻酔薬などの薬物により引き起こされる全身麻酔下では下行性鎮痛系が抑制されるのか、また、その抑制がどのような機序で生じているのか、さらに、これまで臨床で一般的に使用されてきたフェンタニルといった副作用の強いオピオイドを用いない下行性鎮痛系の増強機序を解明し、その機序の応用によって鎮痛・不動化作用を生じさせる、全く新しい全身麻酔法を開発することにある。本研究により、神経科学研究のツールであるマイクロダイアリシス法などを用いて既存の全身麻酔薬が下行性鎮痛系を抑制することを示せれば、手術時の鎮痛・不動化を得るために臨床上より高用量の麻薬性鎮痛薬が使用されていることを明確にできる。さらに、下行性鎮痛系を線条体からのドパミン神経が促進することから、選択的ドパミン受容体作動薬の活用により痛覚抑制系を増強する全く新しい全身麻酔法が確立できれば、呼吸・循環抑制といった重篤な副作用のある麻薬性鎮痛薬を使用しなくてもよくなるかも知れない。3年目以降の研究では、侵害受容器にあるTRPV1受容体の選択的作用薬であるカプサイシンをラットの足蹠に皮下注射することにより誘発されるflinching(痛みのため後肢を引っ込める)行動とこのカプサイシン刺激による脊髄後角からのサブスタンスP(SP)遊離促進作用を静脈麻酔薬の全身投与が影響するか、行動薬理実験とマイクロダイアリシス法を用いて確認した。これにより、静脈麻酔薬のプロポフォールはカプサイシンによるflinching行動を正向反射消失前は抑制せず、SP遊離促進作用にも影響しなかった。オプトジェネティクス実験については、ヒトsynapsinプロモーターの下流にChR2-GFP融合タンパク質をクローニングさせた1型アデノ随伴ウィルスベクターを準備するに至らなかった。
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Pharmacol. Biochem. Behav.
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