研究課題
本研究組織では癌細胞の分化転換の可塑性に焦点を当てて研究を実施し、以下の成果を得た。1)口腔がん由来細胞株OM-1細胞が、がん幹細胞形質、重層扁平上皮リネージを再生できることを証明した。2)OM-1細胞はEMTマスター転写因子Snail依存的にEMTを遂行するが、誘導される間葉形質の可逆性を発見した。3) Snailに加えSlugを遺伝子導入すると可逆的であったEMTは一方向性を示しOM-1細胞に恒常的な間葉形質を付与できた。4)一方EMTマスター転写因子であるにもかかわらず内在性Slugは上皮細胞に発現しており、Snail遺伝子導入によりその発現は消失することを発見した。これによりEMTマスター転写因子の相反的な発現制御が可逆的なEMTを制御すると考えられた。5)Snail,SlugともにZnフィンガードメインをもち、SnailはSLC39ファミリー亜鉛トランスポーターのLIV1に依存して核内で機能を発揮することが示されたため、LIV1発現をOM-1で検討したところ、上皮形質時は発現が認められず、間葉形質誘導時には発現が亢進することが判明した。6)さらに上皮形質時に発現するを示すSLC39ファミリーとしてZIP2を同定し、ZIP2は間葉形質誘導時に消失することを発見した。7)これらの結果より OM-1がEMTを遂行する際にはSLC39ファミリー亜鉛トランスポーターのスイッチングが起きることを発見した。8)内在性Slugは上皮形質に伴い、Slug過剰発現ではEMTを誘導できない一方、内在性ZIP2の発現は増強する。ZIP2ノックダウンによりSlug依存的な可逆的EMTが誘導できるようになったため、ZIP2が消失する亜鉛トランスポーターSLC39ファミリーのスイッチングがEMTマスター転写因子の機能発現を制御することが判明した。
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