口腔扁平上皮癌患者50症例の原発組織からTotal RNA を抽出し、cDNA を合成したのちに、miR-375 の発現をデジタルPCR で発現を絶対定量を行い、頸部リンパ節転移予測マーカーとしての有用性について評価した。その結果、基準値を150 copies/μlと設定すると感度74.2%、特異度89.5%と良好な結果を認めた。標的遺伝子について検討を行ったところ、MMP13 が候補として挙がった。MMP13は当科で行ってきた口腔扁平上皮癌患者のマイクロアレイ解析による網羅的遺伝子発現解析で、リンパ節転移症例で有意に発現亢進する遺伝子の1つとして同定されていた。miR-375 の発現解析に用いた50症例の MMP13 の発現解析をリアルタイム定量化PCR法で検討を行った.その結果、マイクロアレイ解析の結果と同様に、リンパ節転移を有する症例はリンパ節転移のない症例と比較し、有意に発現亢進をしていた。リンパ節転移を有する症例では miR-375 の発現低下および MMP13 の発現亢進を認める結果となった。口腔扁平上皮癌細胞株に miR-375 を導入したところ、増殖抑制効果についてはあまり認められなかった。また、miR-375 を導入した際の遊走能・浸潤能に与える影響については現在実験を継続して行っている。 口腔扁平上皮癌において miR-375 の発現低下はリンパ節転移を有意に関連しており、リンパ節転移予測マーカーとしての可能性が示唆された。
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