研究課題
頸部リンパ節転移を伴わない早期口腔癌症例における後発頸部リンパ節転移(頻度:20~40%)は予後因子となり,その制御が極めて重要である.予防的頸部郭清術は侵襲が大きいため,近年センチネルリンパ節生検が口腔癌にも導入されてきたが,ラジオアイソトープ(RI)法を用いたセンチネルリンパ節生検は放射線被爆や放射線管理区域の問題があり,どの施設でも行えるわけではなかった.これらを改善するために,われわれはインドシアニングリーン(ICG)を用いた小切開による低侵襲なセンチネルリンパ節生検を開発してきたが,いまだいくつかの課題が残されている.本研究の目的は頸部リンパ節転移を伴わない早期口腔癌症例に対する磁性造影剤を用いたMR lymphographyによるセンチネルリンパ節のマッピングおよび磁気プローブを用いた新しい低侵襲なセンチネルリンパ節生検を確立することである.口腔癌周囲4か所に磁性造影剤(リゾビスト)を各0.1 ml(計0.4 ml)を注入し,10分後にMRIの撮影を行った.MR lymphographyによりセンチネルリンパ節のマッピングは可能であった.改良したストレートシャフトのジキプローブの感度は良好であり,開発した金属フレームなしの手術台に装着できるヘッドフレームやチタン製の非磁性器具(鈎や鑷子など)を使用することで,磁性造影剤の流入したセンチネルリンパ節は同定可能であった.センチネルリンパ節が深い位置に存在した場合には,磁気プローブでの同定は困難であったが,MR lymphographyによるセンチネルリンパ節のマッピングにより,皮膚切開位置の設定は十分可能であった.27例に対して実施し,同定率は100%であった.本研究内容は英文雑誌に掲載された.
すべて 2022
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Journal of Stomatology, Oral and Maxillofacial Surgery
巻: 123 ページ: 521~526
10.1016/j.jormas.2022.01.003