研究課題/領域番号 |
18K09823
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
代田 達夫 昭和大学, 歯学部, 教授 (60235760)
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研究分担者 |
佐藤 仁 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (00594954)
椋代 義樹 昭和大学, 歯学部, 助教 (50325099)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 下歯槽神経損傷 / オトガイ神経知覚異常 / オートファジー / 知覚回復 / Rapamycin |
研究実績の概要 |
下歯槽神経損傷によるオトガイ神経知覚異常モデルを作製し,mTOR阻害剤がオートファジーとグリア・ニューロン間相互作用に及ぼす影響を解析し,オートファジーの活性化を軸とした効率的な末梢神経再生法を検討した. Sprague-Dawley系雄性ラットを麻酔し,歯槽骨表面を切削して下歯槽神経(IAN)を露出させた.IANを切断し,創部を閉創してIAN切断(IANX)モデルを作製した.IANX後,下唇に対して左側および反対側へ機械刺激を与えた時の頭部の逃避反射閾値(MHWT)を2日ごとに術後14日まで測定した.また,mTOR阻害剤であるRapamycinをIANX部周囲組織に投与したRapamycin群とDMSOを投与したVehicle群を作製し,MHWTの測定を上記に記載したものと同様に行った.術後6日目に,抗ミエリンタンパク抗体(MBP)を用いた免疫組織化学的染色を行い,下歯槽神経切除部位のMBP発現量を評価した.また,三叉神経節の第3枝領域における脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現量についても同様に評価した. その結果,MHWTはSham群と比較して術後14日目まで有意な増加を認め,知覚鈍麻の症状を呈していた.Rapamycin群はVehicle群と比較して術後6,8,10日目においてMHWTが有意に低下していた.Rapamycin群はVehicle群よりも下歯槽神経切除部位のMBPの発現量が低下する傾向を認めた.また,BDNFの発現量はRapamycin群がVehicle群よりも有意に上昇していた. 以上の事から,Rapamycin投与によって逃避反射閾値の回復を認めたこと,また免疫組織化学的染色においてBDNFの発現量が増加したことから,Rapamycinの投与により生じるオートファジーの活性化は下歯槽神経支配領域の知覚低下の回復を促進するものと考えられた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物を用いた行動観察でRapamycin投与は知覚の回復に有効であることが示されている。また,免疫組織化学的な解析でも、Rapamycinの局所投与が知覚回復に有用であることを示す所見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、下歯槽神経損傷部位におけるSchwann細胞のオートファジーの活性化を定量化するために以下の研究を予定している。 1.Rapamycinの標的タンパクであるmTORはオートファジーを抑制するとされている。mTORの下流に存在するp70S6Kのリン酸化についてウエスタンブロット法を用いて定量化し、Rapamycinの投与がmTORを抑制しているか検討を行う。 2.Schwann細胞のオートファジーによって断片化したミエリンが除去される際、細胞内ではオートファゴソームと呼ばれる膜構造が形成される。このオートファゴソームの膜上に存在するタンパクについてウエスタンブロット法を用いて定量化し、Rapamycinの投与がオートファゴソームの形成に与える影響について検討を行う。 また、現在はRapamycinの投与を術後1日目から行っているが、今後は術前や術後数日後からRapamycinの投与を行う。そのうえで、逃避反射閾値(MHWT)ならびにその他タンパクの発現量の変化について検討を行い、オートファジーの活性化がミエリンの除去に最も効果的に作用する時期について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験を行う事が出来なかったため、その費用を次年度に繰り越し、予定通り実験を行う。
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