研究実績の概要 |
【目的】老化細胞はSASP(senescence-associated secretory phenotype)と呼ばれる炎症性サイトカインなどのタンパク分泌現象を認めるが、骨リモでリング微小環境と関連した報告は少ない。本研究では老化に伴う破骨細胞前駆細胞の分化およびSASPへの影響を解明することを目的とする。 【材料および方法】マクロファージ系破骨細胞前駆細胞株RAW264.7を5、10、20代継代培養(それぞれP5、P10、P20)し、比較検討を行った。細胞増殖能はWST-8を用いて評価した。複製老化の確認のため、SA-βGal活性、Phospho-Histone H2A.Xタンパク発現の確認とテロメアテストを行った。破骨細胞への分化能は、RANKL投与後、TRAP染色とTRAP activity assay、RANK、NFATc1のタンパク発現で評価した。SASP因子(TGF-β1、HIF-1α、iNOS)のタンパク発現を評価し, 培養上清中のIL-6、TNF-α、NO量を測定した。また、培養上清中のエクソソームを抽出し、エクソソーム中のSASP因子のタンパク発現の評価を行った。 【結果】 継代数の増加に伴い細胞増殖は低下していた。P20におけるPhospho-Histone H2A.Xタンパク発現を認めた。また、テロメアテストによるテロメアの長さは継代数の増加につれて有意に短くなっていた。破骨細胞様細胞への分化能はP20がP5、P10と比較して有意に低下していた。培養上清中のIL-6、TNF-α、NO量、エクソソーム分泌量は、継代数の増加に伴い上昇した。P20におけるTGF-β1、HIF-1α、iNOSタンパクの発現はP5、P10と比較すると増加していた。一方、エクソソーム中のタンパク発現を評価すると、P5、P10、P20のいずれにおいてもTGF-β1、HIF-1αタンパクの発現は認めなかったが、P10およびP20のエクソソーム中にiNOSタンパク発現がみられ、P20のiNOS発現が最も強かった。
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