研究課題/領域番号 |
18K09829
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
石田 雄之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (00516297)
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研究分担者 |
細道 純 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00420258)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 歯科矯正学 / ケモカイン / 歯の移動 / 破骨細胞集積 / SDF-1 / CXCR4 |
研究実績の概要 |
近年、骨折治癒過程における局所骨代謝活性化に、SDF-1が血行性幹細胞供給メカニズムを介し重要な役割を果たしていることが報告された。我々はその点に着目し、これまでSDF-1/CXCR4シグナル抑制が矯正的歯の移動量を減少させること、またSDF-1が破骨細胞の歯根膜圧迫側への集積に深く関わることを発見した。また、これらの研究結果を臨床応用する方法として、歯周組織に対する非侵襲性の核酸医薬導入法を開発し、国内外の学会で高く評価を受けてきた。 本研究では、これらの成果を発展させ、骨髄幹細胞が血行性供給システムを介し局所集積する動態を理解し、そのシステムを利用した歯の移動制御を核酸医薬を用いて行うことを目的とし、1)矯正的歯の移動時の歯周組織内におけるSDF-1発現動態の解明、2)歯の移動時のSDF-1/CXCR4シグナルと血行性骨髄幹細胞供給メカニズムの解明、および3)SDF-1に対する核酸医薬を利用した歯の移動制御法の開発、を行うものである。 平成30年度は、SDF-1による破骨細胞の局所集積に関する更なる探求を行った。具体的には、SDF-1拮抗薬であるAMD3100を用いて、AMD3100の継続投与を行うことで、歯の移動が長期間にわたり抑制されること、また歯周組織への局所投与を行っても全身投与を行ったこととほぼ同様の結果が得られること、一方で全身投与を行うことは歯槽骨海綿骨における骨リモデリングに影響を及ぼすが、局所投与ではその影響が抑えられることなどを明らかとなった。 歯根膜に関する生化学的検討も行い、AMD3100投与により圧迫側歯根膜内の、SDF-1、Runx2およびCathepsin Kの発現が抑制される一方で、CXCR4の発現には影響を及ぼさないことを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画の順序は異なるものの、研究期間内で行う項目について、設定したマイルストーンは順調にこなしているため。また、現在研究計画を遂行するにあたっての大きな問題も見受けられないため。ただ、当初考えていた以上にAMD3100の骨芽細胞に与える影響が疑われ、現在AMD3100が骨芽細胞に与える影響について調査している。もし影響が無視できないのであれば、AMD3100の骨芽細胞への影響を排除するため、SDF-1抗体の使用を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は、血行性細胞供給システムにおけるSDF-1の働きを調査するため、計画書通りマウス骨髄移植モデルを作製し、骨髄細胞の採取・培養および放射線照射後の培養骨髄細胞移植法を確立する。蛍光識別したラット由来の骨髄を移植することで、矯正力による歯の移動時に、どの程度の血行供給がなされているのかを確認する。 続いて、上記モデルを組み合わせ、矯正的歯の移動中の歯周組織内SDF-1発現と血行性骨髄系幹細胞の動態との関連を調査し、血行性幹細胞供給メカニズムについて探求する。具体的には、マウスの移動モデルを用いて、放射線照射後、GFPマウス由来の骨髄細胞を移植した群と非処置群を作成し、歯の移動様相、歯槽骨骨パラメーターの変化、並びに歯根形態の変化についてマイクロCTを用いて解析する。また、移植した骨髄細胞の動態についても蛍光マーカーを用いて解析する。その後に、同様のモデルを用いて、全身性にSDF-1/CXCR4シグナルを阻害するAMD3100を投与し、圧迫側歯根膜への血行性骨髄系幹細胞供給にSDF-1/CXCR4シグナルがどのように影響るかに関して、検証する。 最後に、SDF-1/CXCR4シグナル阻害するためにSDF-1のsiRNAを利用し、その歯周組織への局所投与法による歯槽骨代謝の局所制御が可能かを検討し、歯槽骨代謝の新たな制御法の開発を目指す。具体的には、歯根膜に対するPLGAナノ粒子のDDSキャリア有用性の検討を行い、それを用いて歯の移動に伴う血行性幹細胞供給に局所的なSDF-1発現制御が与える影響について探求する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者の変更(研究者死去による)に伴い、研究計画の順序を変更したため、平成30年度予定の研究費残額が一部出てしまった。 令和元年度は、当初予定していた骨髄移植モデル作製に取り組むことから、計画書の通り研究を遂行する予定である。
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