研究課題/領域番号 |
18K09834
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
上田 公子 (山口公子) 徳島大学, 病院, 助教 (40335807)
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研究分担者 |
岩本 勉 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (90346916)
北村 尚正 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 助教 (50614020)
赤澤 友基 徳島大学, 病院, 助教 (10646152)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウシ胎児血清 / 超遠心 / 歯原性上皮細胞 / 歯原性間葉細胞 / 増殖 / 分化 |
研究実績の概要 |
初年度は,硬組織形成細胞の増殖、分化に対する、超遠心法により得られたウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum : 以下FBS)分画の影響を検討することから研究を開始した。 FBSは,超遠心分離機にて100,000g×18時間超遠心し,3層に分かれた分画をそれぞれ回収し,最上方を第1層,中間層を第2層,最下層を第3層として使用した。 まず,それぞれの分画を10%含む培地にて歯原性上皮細胞(SF2)の培養を行い、増殖試験を行った。細胞数のカウントでは,コントロールと比較して,第1層の使用で,細胞の増殖は有意に抑制され,第2層と第3層の使用で細胞の増殖が有意に促進された。BrdU 陽性細胞率では,コントロールと比較して,第1層の使用で有意に減少し,第3層の使用で有意に増加した。次に,分化について検討するためAmelogenin・Ameloblastin を用いて,免疫染色を行った。その結果,Ameloblastin において,その発現範囲が,第1層の使用で,コントロールと比較して有意に広かった。これらの結果より,超遠心法により得られたFBS分画抽出液により,歯原性上皮細胞の細胞増殖は,第1層で抑制され,第3層で促進された。その一方で,第1層では細胞分化が促進された。 次に歯原性間葉細胞(mDP)を用いて、増殖試験を行った。細胞カウントの結果,コントロールと比較して,第1層の使用で,細胞増殖は有意に抑制され,第2層と第3層の使用で細胞増殖が有意に促進された。次に,分化について検討するためアリザリンレッド染色を行った。結果は第1層の使用で,通常より早い時期に石灰化が開始する傾向を認めたが,はっきりとはしなかった。 これらの結果から,超遠心法により得られたFBS分画は硬組織形成細胞の増殖や分化に好影響を与える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は,硬組織形成細胞として、骨芽細胞株、軟骨細胞株、歯原性間葉細胞株、歯原性上皮細胞株を用いて,硬組織形成を促進する因子の同定を目指す予定であった。 まず,歯原性間葉細胞株と歯原性上皮細胞株を用いて増殖や分化についての影響を確認するための実験を開始した。歯原性上皮細胞を用いた実験の後,歯原性間葉細胞の増殖について確認し,10%FBSを用いて,分化について実験を始めたところ,第1層の使用で,早期から石灰化が開始される傾向を認めたものの,第3層を10%含む培地の使用では,ガラスボトムディッシュを使用しても細胞が剥がれてしまい石灰化の十分な評価ができなかった。そこで,10%FBS中に,各分画を5%含むFBSを使用することに変更して同様の実験を行ったが,第1層の使用で,早期から石灰化が開始される傾向を認めたものの,明らかな結果は得られなかった。この歯原性間葉細胞の石灰化の評価に時間を要し,細胞遊走試験やその他の骨芽細胞株、軟骨細胞株を用いた実験が進まなかった。 また,歯原性間葉細胞と歯原性上皮細胞への超遠心したFBS各分画の影響を確認後,硬組織形成細胞へのリポ蛋白(HDL、LDL、超低比重リポ蛋白(VLDL)、カイロミクロン)の影響の検討を予定していたため,歯原性間葉細胞への各分画の分化への影響が確認できなかったため,硬組織形成を促進する因子を同定するための実験ができなかった。細胞増殖については一定の影響が確認されたため,増殖についてのみ先に,リポ蛋白の影響を検討してもよかったかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究で,超遠心法により得られたFBS分画の第1層に,歯原性間葉細胞の石灰化を促進する傾向が認められたため,今年度は歯原性間葉細胞の石灰化を促進する第1層の至適濃度を網羅的に検討後,各分画の歯原性間葉細胞の分化に与える影響を検討することから研究を開始する。また,骨芽細胞株や軟骨細胞株についても,超遠心法により得られたFBS分画の増殖や分化に与える影響を検討する。 各硬組織形成細胞へのリポ蛋白(HDL、LDL、超低比重リポ蛋白(VLDL)、カイロミクロン)の影響を,増殖試験(細胞カウント、BrdU)、ALP活性、アリザリンレッド染色、細胞遊走試験にて検討する。これらの試験により、目指す因子が同定されない場合にはさらにFBSの他の成分について網羅的に検討し、硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する分子の同定を行う。 併せて,今年度の研究では,Western blotting法やreal time RT-PCR法を用い、それぞれの細胞に発現するタンパクや遺伝子の解析を行い、硬組織形成促進のメカニズムを解明する。 また,効果的な石灰化誘導法の開発や効率的な硬組織形成の促進方法の開発を目指し,細胞培養系や、頭蓋冠開削モデルまたは歯の歯髄露髄モデルマウスを用いて、石灰化誘導促進効果や硬組織再生促進効果について検討を行い、臨床応用を目指す研究を実践したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の研究では,超遠心法により得られたFBS分画の歯原性間葉細胞の石灰化への影響の評価に時間を要し,細胞遊走試験やその他の骨芽細胞株、軟骨細胞株を用いた実験が進まなかった。また,各硬組織形成細胞へのリポ蛋白(HDL、LDL、超低比重リポ蛋白(VLDL)、カイロミクロン)の影響について検討できなかった。さらに,これらの試験により、目指す因子が同定されない場合には,FBSの他の成分について網羅的に検討し、硬組織形成細胞の増殖や分化を促進する分子の同定を行う予定であったが,こちらも実行できなかった。前年度の予定で実行できなかった部分があるため,若干の次年度使用額が生じたと考えられる。 次年度の研究では,前年度予定していた上記の研究に加えて,硬組織形成促進のメカニズムを解明するため,Western blotting法やreal time RT-PCR法を用い、それぞれの細胞に発現するタンパクや遺伝子の解析を行うとともに,効果的な石灰化誘導法の開発や効率的な硬組織形成の促進方法の開発を目指し,細胞培養系や、頭蓋冠開削モデルまたは歯の歯髄露髄モデルマウスを用いて、石灰化誘導促進効果や硬組織再生促進効果について検討を行い、臨床応用を目指す研究を実践する。このため,次年度使用額については,実験の消耗品として使用予定である。
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