研究課題/領域番号 |
18K09843
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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研究分担者 |
村本 和世 明海大学, 歯学部, 教授 (10301798)
安達 一典 明海大学, 歯学部, 教授 (20349963)
坂上 宏 明海大学, 歯学部, 教授 (50138484)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 疼痛抑制 / レーザー / 動物実験 / CO2レーザー / 半導体レーザー |
研究実績の概要 |
矯正治療時の疼痛緩和として歯科用レーザー照射が注目されている。そこで動物モデルを用いて検討した。 1)上顎門歯と右側上顎第一臼歯(M1)間に矯正力の負荷直後に右側M1領域にCO2レーザーと半導体レーザーの照射(CO2:0.5 W;距離20 cm;時間30 s,半導体:0.5 W;距離3.2 cm;時間30 s)を行い(PI-D群)、1・3・7日後に、再度気管挿管によるイソフルラン全身麻酔下で心電図、筋電図(顎二腹筋)採取ワイヤーならびに両側M1部歯肉に電気刺激用電極を留置した。M1部に電流値を徐々に上昇させながら連続電気刺激(0.2 Hz)を加え、3/5 回以上の頻度、かつ、安定したlatency(刺激後から筋活動発現までの時間)で顎二腹筋活動を誘発する刺激強度を開口反射誘発閾値(TH)とした。 2)矯正力負荷1日後に、1)と同様に全身麻酔下で筋電図採取ワイヤーと電気刺激用電極を留置し、開口反射活性を評価後、右側M1部にのみCO2レーザー照射(CO2:0.5 W;距離20 cm;時間15 s,30 s,600 s、半導体:0.5 W;距離3.2 cm;時間30 s,600 s)を行い,開口反射活性を30分間隔で60分間測定した(D1群)。なお,動物個体間のTHの差を均等化するためTH比(右側のTH / 左側のTH (%))を算出し評価に用いた。 D1群における矯正力負荷は、TH比を有意に減少させた(P < 0.05)。D1群では,CO2レーザー照射(30および600秒)後、TH比は有意に上昇した(P < 0.05)。半導体レーザー照射(30および600秒)は、TH比を変化させなかった.PI-D群では、いずれのレーザー照射も1日後のTH比を有意に上昇させた(P < 0.05)。更にCO2レーザーによりTH比の有意な上昇が,3日後まで続いた(P < 0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2レーザーと半導体レーザー間は、疼痛制御において差があった。しかしながらこの効果の差につながるメカニズム解明を明らかにすることができず、現状では現象をとらえただけと言える。今後、この差やそのメカニズムを明らかにすることで,矯正治療時の疼痛緩和機序を解明することが必要と考えている。 本研究では、ラットを用いた動物モデルで検討を行っている。現在、この動物モデルの歯周組織からタンパク抽出やRNA抽出を行っている。矯正力を負荷しレーザー照射側と非照射側のタンパクやmRNAの発現を比較して、疼痛に関連する因子の発現差の検討を開始した。実験方法としては、ウエスタンブロッテイング、イムノアレー、ELISA法、Real-time PCR法を並行して行っている。このような検討により、局所で矯正力の負荷により誘導される疼痛関連因子や、レーザー照射によって誘導される疼痛抑制因子の発現が明らかにできると期待している。
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今後の研究の推進方策 |
疼痛を惹起させる因子や分子、そのその相互作用を明らかにすることが必要と考えている。具体的には、まず末梢の歯根膜や歯周組織内において疼痛に伴って変化する因子や分子を同定し、これらに対するアンタゴニストやインヒビターによる抑制効果を検討する。 同時に上記に記したように、D1群では、CO2レーザー照射(30および600秒)後,TH比は有意に上昇した(P < 0.05)。これに対して、半導体レーザー照射(30および600秒)は、TH比を変化させなかった。 この点に関して、昨年度同様に動物モデルの歯周組織からタンパク抽出やRNA抽出後、ウエスタンブロッテイング、イムノアレー、ELISA法、Real-time PCR法などを行い検討する計画である。このような検討により、これまで注目されることが多くなかったO2レーザーと半導体レーザー照射の生物学的効果の差が明らかになることが期待される。さらにこれらのレーザーにおける照射時間の有効性が分子レベルで明らかになることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在行っている動物実験を用いたモデルの歯周組織からのタンパク抽出やRNA抽出と、矯正力を負荷しレーザー照射側と非照射側のタンパクやmRNAの発現を比較する手技は、研究当初においてはもっと早く着手できると考えていた。そのため、ウエスタンブロッテイング、イムノアレー、ELISA法、Real-time PCR法に必要となる試薬やキットをもっと多く購入する使用計画であった。しかしながら、ラットという小動物の歯周組織からタンパク抽出やRNA抽出は容易ではなく、当初の計画以上に期間を要した。また、実験動物への矯正装置の装着は十分な熟練を要する操作であり、実験系の安定に時間がかかった点も計画外であり、次年度使用額が生じた理由と考えられる。
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