研究課題/領域番号 |
18K09843
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
須田 直人 明海大学, 歯学部, 教授 (90302885)
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研究分担者 |
村本 和世 明海大学, 歯学部, 教授 (10301798)
安達 一典 明海大学, 歯学部, 教授 (20349963)
坂上 宏 明海大学, 歯学部, 教授 (50138484)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 末梢性疼痛 / サテライトグリア細胞 / グリア線維性酸性タンパク質 / GFAP / 鎮痛薬 |
研究実績の概要 |
末梢性疼痛は、一次求心性線維の神経節サテライトグリア細胞にGFAP(グリア線維性酸性タンパク質)発現を伴う興奮を引き起こすことが知られている。そこで、歯の移動に伴う疼痛を開口反射誘発閾値(TH)の変化によって定量評価可能な動物モデルを用いた。本モデルでは、矯正力負荷1日後(D1)は右側THが左側と比較して有意に減少し、3日後(D3)で回復傾向を示し、7日後(D7)で上昇する。本研究では、矯正力による疼痛と三叉神経節GFAP陽性サテライトグリア細胞数の関連性と鎮痛薬の効果を検討した。 全身麻酔下で雄性Wistar系ラットの上顎両側門歯と右側第一臼歯間にNi-Tiクロージングコイルスプリングを装着し、矯正力を負荷した。薬物投与群には矯正力負荷直後より、アスピリン(100 mg/kg)、モルヒネ(1.0 mg/kg)を腹腔内投与(8時間毎、3回/日)した。D1、D3、D7において全身麻酔下でTHを測定し矯正力誘発疼痛を評価した。その後ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、両側三叉神経節を摘出した。摘出した組織から通法に従い水平断凍結切片(10 μm)を作製し、GFAP免疫蛍光染色を行い観察した。三叉神経節I、II、III枝領域において、周囲2/3以上をGFAP免疫反応性(IR)細胞に囲まれた神経細胞体数を計測した。(全群n = 5) 右側I・II枝領域でGFAP-IR細胞に囲まれた細胞体が左側に比較して有意に増加したが、D3、D7では有意差はなかった。いずれの鎮痛薬もD1で右側のTHを有意に上昇させ、右側I・II枝領域のGFAP-IR細胞に囲まれた細胞体の有意な減少を伴った。以上より、三叉神経節のGFAP活性は歯の移動に伴う疼痛評価に有効と考えられる。 矯正力誘発疼痛が三叉神経節サテライトグリア活性を伴うこと、また異なる作用機序の鎮痛薬でもその活性を阻止できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である末梢性疼痛が惹起される機構解明が進められている。具体的には、一次求心性線維の神経節サテライトグリア細胞にGFAP(グリア線維性酸性タンパク質)発現を伴う興奮を引き起こすことが証明できた。さらに異なる作用機序の鎮痛薬でもGFAP活性を抑制できることが明らかとなった。以上の研究成果から、本研究はおおむね順調に進展していると評価することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの我々の研究成果から、CO2レーザーの照射により、矯正量負荷に伴う疼痛を抑制することを報告した。本年度はこの点を細胞レベルで検討する。 方法としては、昨年度も用いてきた三叉神経節におけるサテライトグリア細胞のGFAP活性を指標として検討を行っていく。すなわち、全身麻酔下で雄性Wistar系ラットの上顎両側門歯と右側第一臼歯間にNi-Tiクロージングコイルスプリングを装着し、矯正力を負荷する。レーザー照射は、上顎右側第一臼歯に波長10,600 nmのCO2レーザーを用いて、全身麻酔下で発痛閾値を測定する。その後ラットを4%パラホルムアルデヒドで灌流し、両側三叉神経節を摘出する。摘出した組織から通法に従い水平断凍結切片(10 μm)を作製し、GFAP免疫蛍光染色を行い観察する。この時、三叉神経節I、II、III枝領域において、周囲2/3以上をGFAP免疫反応性(IR)細胞に囲まれた神経細胞体数を計測する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19への感染防御対策として、年度末に計画していた種々の学術大会や研究会への成果報告が十分に行えなかった。2020年度は、2019年度の研究成果を含めた積極的な研究成果の報告や公表を行っていく。
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