研究課題
昨年度から開始しているモデルラットを用いたin vivo研究より、0.75%アデニン含有食の給餌を6週間おこなう事で、血清リン(Pi)測定からコントロール群は平均9.32 mg/dLに対し実験群は21.13 mg/dLと有意差を示して高リン血症を生じており、大動脈の血管壁における異所性石灰化がみられることを確認した。同時に検査した血清アルカリフォスファターゼ(ALP)は、コントロール群では平均788.75 IU/Lに対し実験群は482.25 IU/Lと有意に低い値を示していた。口腔組織の組織学的観察から、本研究で焦点を当てている歯根膜組織には大きな変化はみられず、歯根膜腔内に石灰化変性やセメント粒のような異所性石灰物は観察されなかった。また、Pit-1、 Pit-2の免疫組織学研究からも大きな変化は認められなかった。しかし、実験群の歯髄では異所性石灰化である象牙粒を観察することができ、線維芽細胞が細胞成分の多くを占める歯根膜と歯髄でも、その特徴に違いがあることを示唆する結果を得た。また、継続しておこなってきたヒト歯根膜線維芽細胞を用いたin vitro研究において、本年度はヒトの高リン血症(定義:血清Pi濃度1.46mM以上)を想定したPi添加やALP活性阻害剤(レバミゾール)の添加を追加し、これまでの研究で決定している3種類の培養条件(通常培養、石灰化誘導培養、石灰化誘導培養にフォスフォノギ酸を添加)で培養し、石灰化誘導の経時的変化の観察をおこなった。その結果、培養開始10日後には、石灰化誘導培養群と石灰化誘導培養+Pi添加群では石灰化物を認めるも、石灰化誘導培養+Pi添加+レバミゾール添加群やフォスフォノギ酸添加群では石灰化物を確認できなかった。以上のことから、歯根膜線維芽細胞の骨芽細胞様細胞への分化誘導において、細胞外のPi濃度よりも、ALP活性やナトリウム依存性リン酸トランスポーター(Pit-1、 Pit-2)による影響を強く受けている可能性が示された。
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