研究課題/領域番号 |
18K09858
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
國則 貴玄 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00626666)
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研究分担者 |
宮脇 正一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (80295807)
八木 孝和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (10346166)
菅 真有 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (50779973)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ブラキシズム |
研究実績の概要 |
これまでの、副作用がなくかつ侵襲のない迷走神経刺激方法として、耳介への経皮的刺激が唾液流出率および副交感神経活動を促進するかどうかの予備実験により、耳介への経皮的刺激は唾液分泌と副交感神経活動を促進したことから、経皮的迷走神経刺激が唾液分泌や嚥下ならびにそれに続く食道の蠕動運動を促進して、ブラキシズムの抑制に役立つのではないかと考え、食道内の酸クリアランス促進によりブラキシズムを抑制する経皮的刺激療法の開発を本研究の目的とし、動物実験を行ってきた。これまでコットンボールを用いて唾液量を計測するとともに、マウスを実験群として、粉末食を与えて飼育したもの(粉末食群)と、下顎前歯にレジンを築盛して粉末食を与えて飼育したもの(咬合不調和群)を設定し、通常の固形食を与えて飼育したControl群との比較を行ってきた。体重と食餌量は電子天秤測とマルチフィーダー(精密に食餌量を測定できるエサ箱)による測定を行ったが、実験群(粉末食群、咬合不調和群)はcontrol群と比較して体重と食餌量が有意に低下していた。また、高架式十字迷路試験では不安様行動が実験群で増加するというデータが出ており、粉末食による咀嚼刺激の低下や、不正咬合によるストレスが不安を増幅する可能性が示唆された。さらに、咬合不調和による咀嚼刺激の低下や、ストレスが、摂食関連ペプチドであるグレリン、AgRP、Ucn1、OXTの発現を介して認識機能の低下を惹起する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
引き続き、コットンボールを用いて唾液量を計測するとともに、マウスを実験群として、粉末食を与えて飼育したもの(粉末食群)と、下顎前歯にレジンを築盛して粉末食を与えて飼育したもの(咬合不調和群)を設定し、通常の固形食を与えて飼育したControl群との比較を行っている。体重と食餌量は電子天秤測とマルチフィーダーによる測定を行ったが、実験群(粉末食群、咬合不調和群)はcontrol群と比較して体重と食餌量が有意に低下していた。唾液分泌低下が食道粘膜の酸クリアランスを低下させ、炎症を惹起するという仮説に基づき、組織解析を行い、咬合不調和モデルマウスの胃、食道を取り出し切片を作製し、H-E染色し解析している。また、認識機能を測定する新規物質探索試験では咬合不調和群においてControl群、粉末食群と比較して認識機能が有意に低下していた。さらに、消化管ホルモンとして知られる胃から分泌され、視床下部に作用し摂食行動を促すグレリンの発現量をELISA法にて測定を行ったところ、グレリンの発現量が咬合不調和群においてControl群、粉末食群と比較して有意に増加していた。また、マウス視床下部をRT-PCR法にて解析した結果、摂食関連ペプチドであるAgRP、Ucn1のmRNAの発現が咬合不調和群において、Control群、粉末食群と比較して有意に増加していた。そして、咬合不調和群においてOXTのmRNA発現がControl群と比較して有意に増加していた。これらのことから、咬合不調和による咀嚼刺激の低下や、ストレスがグレリン、AgRP、Ucn1、OXTの発現を介して認識機能の低下を惹起する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
マウスの唾液量の計測を継続しながら、唾液分泌低下が食道粘膜の酸クリアランスを低下させ、炎症を惹起するという仮説に基づき、引き続き組織解析継続する。また、咬合の不調和モデルマウスの認識機能が低下する機序の解明のため、リアルタイムRT-PCR法を用いて、視床下部の神経伝達物質(脳腸ペプチドやストレスホルモン)発現量の測定を引き続き行う。さらに、マウス視床下部のタンパク発現解析のため、凍結切片を用いて免疫染色を行い、AgRPやUcn1、OXTのタンパク発現を確認し、さらにそれらのペプチドの拮抗物質を脳室内投与することにより、咬合不調和モデルマウスの認識機能が向上するかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)昨年に引き続き、セボフルレンによる吸入全身麻酔下で、Wistar系雄性ラットの左側顎下腺導管にφ0.8mmのカニューレを挿入し、圧力・歪み応力増幅装置、データ集積装置で食道の蠕動運動、唾液、嚥下等を記録可能なモデルラットの作製を検討したが、手技が非常に難しく、実験開始が遅れた。また、新型コロナウィルスの影響で、実験器具が手に入り辛く、搬入するのが遅れたため、実験計画に遅れを生じた。臨床研究においては、睡眠時ポリグラフ検査への同意が得られず、検証ができていない。 (使用計画)マウスの唾液量の計測を継続しながら、唾液分泌低下が食道粘膜の酸クリアランスを低下させ、炎症を惹起するという仮説に基づき、引き続き組織解析継続する。また、咬合の不調和モデルマウスの認識機能が低下する機序の解明のため、リアルタイムRT-PCR法を用いて、視床下部の神経伝達物質(脳腸ペプチドやストレスホルモン)発現量の測定を引き続き行う。さらに、マウス視床下部のタンパク発現解析のため、凍結切片を用いて免疫染色を行い、AgRPやUcn1、OXTのタンパク発現を確認し、さらにそれらのペプチドの拮抗物質を脳室内投与することにより、咬合不調和モデルマウスの認識機能が向上するかを検証する。また、進捗の遅れている動物実験のためのマウスやラット、消耗品の購入にあてるほか、臨床研究の必要経費にもあてる予定である。
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