研究課題/領域番号 |
18K09861
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
黒石 加代子 (中尾加代子) 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60468303)
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研究分担者 |
松原 琢磨 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (00423137)
川元 龍夫 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (50323704)
佐藤 毅 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (60406494)
松尾 拡 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (70238971)
郡司掛 香織 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90448811)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 骨分化 / Slitrk1 / 骨芽細胞 |
研究実績の概要 |
矯正装置により荷重が歯に付与されると、圧迫側で破骨細胞による骨吸収と牽引側で骨芽細胞による骨形成が生じ、結果として矯正学的歯の移動が生じる。つまり歯の移動時には破骨細胞と骨芽細胞の両方ともが活性化される必要があるが、骨芽細胞は破骨細胞に比べて活性化しにくく、活性化機構にも不明な点が多い。トゥレット症候群は自閉症や多発性チックを特徴とする疾患で骨形成の遅延や骨折症例が多いと報告されている。そこで、我々は成熟した骨芽細胞に発現量が高く、トゥレット症候群原因遺伝子の1 つであるSlitrk1 に着目し、骨形成におけるSlitrk1 の役割を検討した。 6ヶ月齢雄のSlitrk1 ノックアウトマウス(KO)および野生型同腹子(WT)の大腿骨の骨量をμCTで解析した(n=5)。8 週齢雄のKO およびWT の背筋筋膜下にBMP-2 ペレットを埋入し、異所性骨形成を誘導した (n=4)。大腿骨から採取した骨髄間質細胞 (BMSC)にBMP-4を添加し、骨芽細胞分化を誘導しALP活性を測定した。BMSCおよび初代培養骨芽細胞をAscorbic acid とβ -Glycerophosphate で骨芽細胞分化を誘導し、7日目と14日目にRNAを回収、real-time PCR法でSlitrk1の遺伝子発現を検討した。 Slitrk1 KOの大腿骨の骨量はWTに比較して減少傾向であり、KOに形成された異所性骨はWTのものより小さかった。またKO大腿骨から採取されたBMSCでは、BMP-4が誘導するALP活性は有意に低下した。さらにBMSCや初代培養骨芽細胞では骨芽細胞分化に伴い著明にSltirk1の遺伝子発現量が増加した。 Slitrk1 は骨芽細胞分化を誘導し骨形成に関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Slitrk1ノックアウトマウスでは、ワイルドタイプと比較し骨量が減少傾向を示し、KOに形成された異所性骨はWTのものより小さいことが分かった。また、Slitrk1ノックアウトマウス由来の骨髄間質細胞の骨形成誘導の場合でも、ALP活性がワイルドタイプと比較して有意に減少したことを確認した。さらに、培養骨芽細胞(骨髄間質細胞や初代培養骨芽細胞)の分化と共に、Slitrk1の遺伝子発現が増加することが分かり、着実に結果を得ることができており、本研究の進捗状況としてはおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
TAZはRunx2の転写共役因子として知られている。14-3-3タンパクはTAZと結合する報告があり、また14-3-3タンパクはSlitrk1とも結合するとの報告がある。Slitrk1がTAZと競合的に14-3-3タンパクと結合することで、骨分化を制御するのではないかと仮説を立て、今後TAZの発現を確認し、発現部位をクロマチン免疫沈降や核/細胞質分画に分け、確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験に関する試薬・消耗品などの物品費に関して、低コストで購入できたため。さらなる実験の試薬等購入に使用する。
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