研究実績の概要 |
前年度から継続して、NiTiコイルスプリング矯正装置(15g荷重)を使用して、ラット上顎第一臼歯の近心移動実験を行った。雄性Wistarラット (体重200~280g) を①無処置群 ②矯正処置群 ③矯正処置+レスベラトロール投与群 (2mg/kg, i.p前日より連日投与) の3群に分けた。深麻酔化にて 、左側第1臼歯に対してNiTi製コイルスプリングを連結したクランプを動物口腔内で装着し、これを“矯正処置群”とした。処置後1-3日の左口ひげ部分にvon Frey hairsを用いて逃避反射閾値を測定し異所性痛覚過敏の有無を判定した。また、逃避反射閾値が回復した3日目のラットと他2群ラットにおいて、ペントバルビタール麻酔下でSpVcに刺入したガラス微小電極より顔面皮膚機械刺激に応じるWDRニューロン活動をPower LabとPCを用いて細胞外単一ユニット活動を記録し、SpVc WDRニューロンの興奮性を比較解析した。矯正処置群の左口ひげ部分に対する逃避反射閾値は、無処置群に比較し、処置後3日目まで有意に低下し、異所性痛覚過敏が確認された。矯正群の逃避反射閾値の低下は、レスベラトロール連日投与により減弱する傾向を示し、処置後3日目において対照群レベルに回復した。処置後3日目の上記3群のラットよりSpVcの第II-IV層より、顔面皮膚に機械的受容野を持つ非侵害刺激から侵害刺激のレベル刺激強度に応じるSpVc WDRニューロンを記録した。矯正群では刺激に対するWDRニューロンの(1)機械刺激の閾値低下、(2)誘発放電頻度の増加、(3)自発放電頻度の増加、 (4)受容野の拡大が観察された。これらの変化はレスベラトロールの連日投与により有意に抑制され、行動学的知見と一致した。
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