研究実績の概要 |
舌突出や口唇弛緩に対して筋機能訓練を行い,舌圧・口唇圧を計測・評価したDown症候群において,歯列咬合矯正治療との関連性を解析した.対象として、後ろ向き調査対象として,Down症候群症例において,舌圧あるいは口唇圧のいずれかを行った19名(筋機能訓練(以下MFT)をおこなった歯科矯正治療中11名(以下矯正-MFT群),矯正治療なく筋機能訓練のみ行った4名(MFT群), 矯正治療中でMFTをおこなっていない4名(以下矯正-対象群:舌圧評価のみ)).また、健常児における舌の機能の歯列咬合への影響を調査した。方法 1.舌圧・口唇圧は,それぞれJMS舌圧測定器および歯科用口唇筋力固定装置を用いて行い,筋機能訓練および矯正治療の舌圧・口唇圧の変化との関連を調べた. また、3D画像撮影解析装置ベクトラを用いて舌形態を定量化した.結果は、1.MFTによる舌圧に対する有意な効果は認められなかった.2.2020年4月1日より12月末までに口腔機能発達に関わる問診および検診をおこなった健常児のうち303名に咀嚼機能の問題を含む口腔機能発達不全と診断された。その中の195名に、機能的因子による歯列咬合の異常を、176名に嚥下時の舌突出を認めた。舌の形態異常は認められなかった。機能的因子による歯列咬合の異常と舌突出の間には有意な関係を認めた。舌突出を認めたうち約半数の87名に口唇の弛緩を認め、舌突出のあった全例に口唇弛緩を認めたダウン症との違いを認めた。また健常児においてはMFTによる口唇圧の改善を認めた。考察として、Down症候群における舌圧・口唇圧は健常児と比較的して顕著に低下しており、舌圧および口唇圧低下がお互いの憎悪因子になっていることが示唆された。ダウン症のMFTの効果が健常児と比較して低いことから、歯列咬合異常に対して、訓練よりも矯正治療の意義が示された。
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