研究実績の概要 |
2020年4月から2022年3月までの2年の間に口腔機能発達不全症の診断に基づき管理を開始して,2022年12月末までに管理を終了あるいは中断となった142名とした.電子カルテを後方視的に調査し,口腔機能発達不全症の診断内容,受診日程,管理期間評価時の口腔機能および咬合状態の変化を抽出し検討を行った.結果として,1.評価・訓練の受診回数の平均値は,4.5±2.0回(最小1‐最大11回)であった.2.管理開始時の歯列咬合異常の頻度は,多い順に,開咬31.7%(45名),交叉咬合11.3%(16名),反対咬合・上顎前突各8.5%(各12名),過蓋咬合7.7% (11名),切端咬合他4.2%(6名)(重複あり)であった.全体では67.8%(96/142名)に不正咬合が認められた.3.管理開始時の開咬のうち28.9%(13例),反対咬合のうち25.0%(3例)に管理期間中の咬合状態の改善を認めた.4.改善を伴わないままでの期限による終了や,管理中での継続中断が54.9%(78名)に認められた.これらの中断者を含めて管理開始時に咬合異常を認めた96名中の希望者28名(29.1%)については,管理終了後,歯列咬合誘導のための相談あるいは精査加療が開始された.以上の結果より1.一般集団と比較して,不正咬合の割合が顕著に高く, 口腔機能発達不全症の診断に関わる咀嚼機能の関連項目の中では,不正咬合が特に大きく関連することが示唆された.2.訓練の咬合状態の改善に対する一定の効果が認められた.特に開咬や反対咬合の割合が高いことと,これらの不正咬合に対する訓練期間の改善効果を認めたことから,不正咬合の状態による口腔機能の影響と訓練の役割が示された.3.重度の開咬など,訓練による機能改善の効果が得にくい場合があることが分かり,症状による咬合誘導の選択肢と治療のタイミングの重要性が明らかとなった.
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