研究課題
令和元年度は、中山間地域(A地区)おいび都市部(B地区)において、地域在住高齢者を対象とした調査事業を行い、オーラルフレイルと関連要因の探索を行った。A地区での642名を対象とした調査結果をもとに、咀嚼機能と栄養および体力指標との関連性の検証を行った。重回帰分析の結果では、男性では四肢筋肉量が、女性では食品摂取の多様性で有意な関連性を認めた。B地区での調査では、口腔機能の中でも特に唾液分泌量に着目し、6年間の縦断データを用いて関連要因の探索を行った。2013年および2019年に実施した来場型健診に参加した地域在住高齢者336名のうち、ベースライン(以下、BL)である2013年時点で唾液分泌低下を認めなかった221名(男性81名、女性140名、平均年齢72.3±4.9歳)分のデータを分析対象とした。安静時唾液分泌量は、舌下にロールワッテを留置し、30秒間の吸収量を計測し、0.1mg未満を唾液分泌低下群(以下、低下群)とした。食欲の評価は、シニア向け食欲調査票日本語版(以下、CNAQ-J)を用いた。2019年時の唾液分泌量低下の有無を従属変数、BL時のCNAQ-Jのスコアを独立変数、年齢、性別、現在歯数、体格指数、既往歴、服用薬剤、うつ性自己評価尺度(以下、SDS)、喫煙習慣(すべてBL時)を調整変数としたロジスティック回帰分析を用いて分析を行った。本研究の対象者のうち、低下群は19.0%(43名)で、男女間で有意差は認められなかった。ロジスティック回帰分析の結果では、他の要因の影響を調整しても、低下群は正常群と比較して、CNAQ-Jのスコアが有意に低い結果を示した(オッズ比:0.843、95%信頼区間:0.717 - 0.990)。
2: おおむね順調に進展している
地域における調査事業において、高齢期における口腔機能低下の実態とその関連要因の検討が行えたため。また、学会発表および論文掲載により、研究成果の公表を行えたため。
これまでの研究活動によって蓄積されたデータに基づき、指標の妥当性および信頼性について検証を行う予定である。
調査対象者が当初の見積もりよりも少なかったため、消耗品等の経費が想定を下回った。また、調査作業の効率化が図られたことにより、データ収集、データ入力に係る人件費が想定を下回った。次年度は最終年度となるため、研究費をデータの分析や最終成果物の作成等の経費に充当する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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