研究課題/領域番号 |
18K09883
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
吉松 昌子 長崎大学, 病院(歯学系), 助教 (20420630)
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研究分担者 |
北浦 英樹 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (60295087)
藤村 裕治 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (70448504)
小原 悠 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (70623825)
森田 幸子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (00631574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 口腔粘膜炎 / Blimp-1 |
研究実績の概要 |
Blimp-1(B-lymphocyte-induced maturation protein-1)は、発見当初B細胞成熟に働く因子として紹介された。B細胞は抗体を産生して免疫応答において中心的な役割を果たすことから、感染防御になくてはならないリンパ球である。がん化学療法による口腔粘膜炎は免疫力低下、細菌感染などにより誘発される口腔粘膜局所の症状であることから、Blimp-1はがん化学療法による口腔粘膜炎の発症や治癒過程に関与していると思われる。これまでに、がん化学療法誘発口腔粘膜炎におけるBlimp-1の関わりについての報告はない。また、本研究者が骨代謝の分野でこれまでに研究を進めてきた炎症性サイトカインであるTNF-αは、がん化学療法に伴う口腔粘膜炎の発症にも関わっていることが報告されており、その関連因子として近年注目されているBlimp-1は、その作用をブロックするとTNF-αの関わる破骨細胞形成が抑制されるとの報告がある。このことから、Blimp-1がTNF-αと共に口腔粘膜炎の発症・悪化に関わっているのではないかと予想している。本年度は、マウスに化学療法剤5-FUを尾部より静脈注射し、口腔粘膜炎モデルを構築した。化学療法剤を投与後、経時的に口腔粘膜を採取して、4%ホルムアルデヒドにて固定し、通報に従いパラフィン切片標本を作製し、現在はその切片でBlimp-1の免疫染色の条件調整を施行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマウスにおける口腔粘膜炎モデルを構築できた。口腔粘膜組織におけるBlimp-1の発現について検討を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 口腔粘膜炎を組織学的に解析:野生型とBlimp-1ノックアウトマウスに化学療法剤を投与後、経時的に口腔粘膜を採取しパラフィン切片標本を作製する。標本染色により各群の口腔粘膜組織の相違を比較し、Blimp-1の口腔粘膜炎への影響を確認する。また、野生型マウスより得られた切片ではBlimp-1の局在を観察する。 2. 口腔粘膜炎制御因子の解析:野生型とBlimp-1ノックアウトマウスに化学療法剤を投与後、経時的に口腔粘膜組織を採取し抽出したmRNAを用いて、炎症性サイトカインTNF-α、IL-1、IL-10、IFN-γ、G-CSFの発現量の経時的変化をreal time RT-PCRにより定量的に評価し、Blimp-1の関わる口腔粘膜炎関連因子を探索する。野生型ではBlimp-1の発現も定量し、化学療法剤を投与しないコントロールと比較して口腔粘膜炎組織におけるBlimp-1の発現を評価する。 3. Blimp-1の口腔粘膜炎制御におけるシグナル伝達の解析:野生型とBlimp-1ノックアウトマウスの口腔粘膜上皮細胞を採取し、化学療法剤を作用させて培養する。培養上清と培養細胞を回収し、in vivoで特定された口腔粘膜炎関連因子についてreal time RT-PCRにて発現量を定量し、Blimp-1の影響を解析する。さらに、野生型マウスより採取した細胞にTNF-αを添加した後化学療法剤を作用させて培養し、Blimp-1の発現量をTNF-αを添加しないコントロールと比較し、TNF-αのBlimp-1への影響を解析する。また、Blimp-1の関わる口腔粘膜炎発現時の標的分子シグナル伝達を解析するために、炎症のシグナル伝達に重要な因子のうちTNF-αの下流にあるTRAF2、NIK、Iκ-B、NF-κBについてWestern blotによりリン酸化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスモデルの構築が当初計画よりも順調に進展したことから、消耗品の購入が予定の費用を下回った。残額を次年度に繰越し、試薬や抗体などを購入して使用する予定である。
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