研究課題
口腔常在菌の一種であるミレリレンサ球菌について2種類の表層線毛(Saf、AgI/II)を有する株と欠損株についてマウスの肺の抽出液との結合能を調べたところ有意に線毛を有する株の方が結合量が多かった。そこで線毛成分を固相化した状態で肺の抽出液と混合、放置した後、結合しなかった成分を洗い流した後で結合成分を解離して調べたところ分子量が20万を超える分子が検出された。これを質量分析器で解析したところgp-340が同定できた。この物質は唾液凝集素としても知られているもので、線毛を有するインターメディウスレンサ球菌は唾液中のこの成分と結合することが分かっていることから、口腔への付着と同一の機構で肺の組織に付着することが示唆された。表層線毛はコアタンパクとチップタンパクという2つの成分で構成されており、唾液凝集素とはコアタンパクが結合することを以前示したため、肺のgp-340にもコアタンパクが結合することが示唆された。しかし他のグラム陽性菌ではチップタンパクが感染宿主との付着因子として働くことが示されており、ミレリレンサ球菌での役割は不明なままである。一方で生体中では宿主の抗菌作用が働くことから感染力を評価するためにヒト血液中での抵抗力を評価した。線毛を有する株と有しない株についてヒト血液あるいは血漿と混合して一定時間放置した後、どれだけの菌が生き残っているかを調べたところ、線毛があるなしに関わらず急速に死滅することを認めた。溶血性レンサ球菌では線毛がヒトの血液成分と結合することで抗菌作用を呈することが示されているため、類似の作用はないようであった。実際の臨床現場では肺だけでなく脳、肝臓でもインターメディウスレンサ球菌の感染が報告されていることから線毛とは別の抗菌機序を持った株が強病原性株として存在している可能性が示唆された。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Supportive Care in Cancer
巻: 28 ページ: 4155-4162
International Journal of Case Reports
巻: 4 ページ: 142-147